研究課題
2002年調査当時には,サゴ属フィジーゾウゲヤシの利用は一般にみられたが,近年減少傾向にあり,一部地域では利用されているものの,2014年に全島的には絶滅が危惧される種と認識されるに至り,資源保全と持続的利用に向けた問題が顕在化した.そこで27年度は,フィジーゾウゲヤシ利用の現状,資源賦存量の把握に向けた群落内立木構成を調査した.また,近縁種との遺伝的距離の解析に向け,5S rDNAスペーサー領域の塩基配列を解析した.(1)利用状況フィジーゾウゲヤシのパームハート(芯)はsonga shootと呼ばれ,野菜として利用されてきた.14年前には,生育地に近いビチレブ島南岸クイーンロード沿で1本F$4,スバ市内の市場ではF$2で一般的に販売されていた.しかし2015年の調査では,生育地付近での販売はみられず,市場でもsongaを扱う店舗は極少数であった(1本F$3).それに対し,用途が似たサトウキビ属のdurukaは野菜を売る店舗のほとんどで扱われており(10本F$6),季節性もあるが対象的であった.このduruka需要は国内外で堅調とみられた.(2)群落の立木構成島南部Galoa地区西方の生育地において,10m×10mを区画サイズとして群落構成を調査した結果,幹長2mを超える個体は4.5本,幹長2m未満の個体は2.5本,幹立ち前の個体は22.5本であった.実生については最大で72本であった.幹長と胸高直径は,幹長2mを超える樹で各々2.93m,29.8cm,幹長が2mに満たない樹で1.32m,24.3cmであり,髄部乾物量の合計は約50kgと見積もられた.なお,Galoa地区近郊では植林活動が進められており,Pacific Harbour地区では2000年代に進められたフィジーゾウゲヤシ生育地を含む土地開発が停滞,植生の回帰が認められるなど群落サイズに変化が観察された.
2: おおむね順調に進展している
年度当初の計画では、利用実態の把握、資源量推定に向けた説明変数の取得、および太平洋地域の他の島々に分布する主との遺伝的距離を調査するための5S rDNAスペーサー領域情報の解析をあげた.いずれにおいても,計画に従った順調なデータ収集、解析が行なえている.
28年度はサモアでの調査を計画する.サモアでは研究代表者らが過去に行なった2004年当時には,サゴ属植物はバヌアツやフィジーにも分布するMetroxylon warburgiiの他に,サモア起源のM. paulcoxii (M. upoluense)がみられたものの,M. pauocoxii個体は極めて少なく,絶滅が危惧される種として考えるべきとの認識に至った.(1)サゴ属ヤシ農業形質情報の整備:①M. warburgii個体群とM. paulcoxiiの分布状況,異なる分布地域の個体密度,群落構成(異なるステージの割合)と群落更新経過を調査する.②バイオマス量の把握:成熟期個体の樹高,幹長,葉長,胸高直径をもとに,個体当たりおよび群落当たりのバイオマス生産量の推定を行なう.(2)サゴ資源賦存量の把握と増産可能性の見積もり①サゴヤシ分布域を抽出し,立ち木密度,デンプン・糖収量構成要素を主たる説明変数として用いることにより,現存するサゴ資源量を推定する.②問題土壌での作付け拡大によるバイオマス増産を図った場合,どの程度の生産増を期待し得るのかについて,これまでの当研究グループの蓄積データを活用しつつ試算を行なう.
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 4件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
SAGO PALM
巻: 24 ページ: in press
J. Appl. Glycosci.
巻: 62 ページ: 73-80