研究課題/領域番号 |
15H05252
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
和田 実 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 教授 (70292860)
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研究分担者 |
岩滝 光儀 東京大学, アジア生物資源環境研究センター, 准教授 (50423645)
横内 一樹 国立研究開発法人水産研究・教育機構, 中央水産研究所, 研究員 (50723839)
菅 向志郎 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 准教授 (60569185)
平坂 勝也 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(水産), 助教 (70432747)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | メコンデルタ / 魚類養殖 / 微細藻類 |
研究実績の概要 |
トビハゼ(ホコハゼ)養殖場から分離された微細緑藻株について18SrRNA 領域の塩基配列を決定したところ、細胞の形態から推定されたChlorella属だけでなく、Oocystis 属やTrebouxiophyceae 属などの緑藻類も含まれることが分った。 保有する緑藻分離株から最も増殖活性の高いOocystis 属緑藻株を選択し、ナイルレッド(NR) による染色法、及びガスクロマトグラフィー(GC)分析法でそれぞれ脂質と脂肪酸の蓄積量を調べたところ、藻体湿重量100gあたりの不飽和脂肪酸量および飽和脂肪酸量はそれぞれ300mgと400mgだった。 その緑藻株をベトナム・カントー大学構内においてホコハゼの稚魚と共存させて約1ヶ月間飼育したところ、稚魚の全長および体重はともに緑藻株添加区で有意に増加した。添加した緑藻株も稚魚と共存させた場合に顕著に増殖が促進された。Bac Lieu省での先行調査では、ハゼ養殖施設において、高密度に存在する藻類は夜間の呼吸により溶存酸素を激しく消費し無酸素状態を作り出すことから、養殖しているハゼに負の影響を与える可能性が考えられたが、今回の結果は、緑藻の存在がハゼの増殖促進に貢献している可能性を示している。 Oocystus属緑藻株の培養液中には従属栄養性細菌が共存しており、その数は緑藻株の対数増殖初期および後期に増加する傾向を示した。分離株として得られた共存細菌の16SrRNA遺伝子配列から、多くの分離株がMicrobacterium属であることが分った。緑藻類の共存細菌群集の16SrRNA遺伝子タグシーケンス解析により、この細菌グループが、最も優占する一群であることも確かめられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度と同様に日本を含む外国からの研究者によるBac Lieu省の水産養殖施設への立ち入り制限が厳しく継続されており、研究代表者および分担者は当初予定した頻度および規模での調査を実施できなかった。Bac Lieu省へは、ベトナムのカウンターパートであるカントー大学を通じて、制限の緩和を求めてきたが、現在までのところ、状況は改善されていない。このため、微細藻類株のカルチャーコレクションの拡充についても、支障をきたしている。 ただし、すでに得られた藻類株については、脂質分析、分子系統、増殖特性などの基礎知見を得つつある。保有する緑藻株とベトナムの養殖施設で実際に飼育されているハゼ(ホコハゼ)の稚魚を用いた共存飼育実験も進め、高濃度の緑藻株存在下でハゼの成長促進を確認できた。以上のことから、現地調査について当初計画からの遅れが解消されない中で、可能な限りの進展を遂げたといえる。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査の実質化のため、Bac Lieu省へは、ベトナムのカウンターパートであるカントー大学を通じて、引き続き、立ち入り許可を強く求める。 現有する緑藻分離株を用いて、培養条件の違いによる脂質組成の変化を明らかにするとともに、その他の生理活性物質生産や抗酸化活性などの有用性について、定量データ収集を進める。 緑藻株カルチャーコレクションを充実するため、南ベトナムのBac Lieu省以外に、近隣のSoc Tran省などにおいて、水産養殖施設への訪問、調査および微細藻類分離の試料採取を試みる。 緑藻株による魚類飼育に対する有用作用(増殖促進効果)を、他の魚種(稚魚)を用いてさらに検証する。
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