研究実績の概要 |
バングラデシュには,Non-descript Deshi, Red Chittagong, Pabna, North Bengal Grey, Mushigonjという在来牛がいる。これら在来牛は,高温多湿の過酷なバングラデシュ環境に適応できる能力を有している。しかし,モノやヒトのボーダーレス化を伴うバングラデシュの人々の生活様式の変化とともに,これら在来牛の数が減少している。 申請者らは,これら在来牛の保存に関する知見を得るために研究を進めてきた。具体的には,Non-descript Deshi, North Bengal Greyなどのサンプリングを進め,これらの牛のマイクロサテライト解析ならびにマイクロチップによる解析を進めてきた。しかし,環境が日本とは大きく異なる現地由来のサンプルを解析することは容易ではないことから,解析に時間がかかっている。また,ダッカでのテロ事件後,治安の悪化から現地でのサンプリングが容易ではなくなった。このため,平成29年度は現地研究者を招聘し,採材に必要な技術の移転を行った。以降,この技術を持ち帰り,さらなるサンプリングを進めることとなった。 申請研究を進めていくうちに,現地の畜産の現状が明らかになった。現地では,寄生虫性疾患を含む感染症が多く,同国の畜産の発展のためには,さらなる疫学調査ならびに臨床獣医学的な研究が必要であることが明らかになった。興味深いことに,同国の在来牛は現地の感染症に対する抗病性を有していることが示唆された。このため,単に同国の在来牛を保存していくだけでなく,効率的なタンパク生産のために在来牛を活用していく必要があると考えられた。
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