研究課題
本研究では、ウシとブタでの無鉤条虫・アジア条虫幼虫感染(のう虫症)の迅速検査法の開発を第1の目的としている。両条虫はヒトを終宿主とし、それぞれウシとブタを中間宿主とする。世界各地で公衆衛生上の問題となっている。H29年度には、ラオスで雨季と乾季に調査を行った。集落で飼育されているブタとウシから採血し、血清検査に供した結果、複数の陽性個体を確認した。血清検査には、従来の抗原に加え、新たに無鉤条虫幼虫から精製した抗原を用いた。陽性個体を含むウシとブタを購入して解剖し、寄生虫の有無を確認した結果、陽性ウシから条虫の幼虫が確認された。一方で、いずれの抗原においても近縁の条虫(胞状条虫)との交差反応が見られた。また、新たに用いた抗原では偽陰性が1例見られた。これらの結果から、本研究で開発した血清検査法は、他の条虫との交差反応は認められるものの、のう虫症感染ウシを検出できると考えられた。一方、本研究ではアジア条虫幼虫感染ブタを確認することができず、本検査法の有用性を検証することはできなかった。本研究のもう一つの目的は、両条虫の交雑子孫の宿主を明らかにすることである。アジア条虫はブタ、無鉤条虫はウシに寄生するとされているが、近年両種の交雑子孫が発見され、その宿主は不明である。H29年度にラオスで陽性ウシから得られた条虫幼虫についてミトコンドリアDNAと核DNAの2遺伝子の塩基配列を決定した結果、いずれも無鉤条虫型であった。しかしながら、ゲノム解析を行った結果、全体としてみれば無鉤条虫に近い領域が多いものの、アジア条虫に近い領域も存在することが明らかになった。すなわち、純粋な無鉤条虫ではなく、交雑子孫であることが示された。ウシとブタそれぞれから得られた交雑子孫をより多く用いて比較ゲノム解析を行うことで、無鉤条虫とアジア条虫の宿主特異生を規定している遺伝子の絞り込みが出来ると考られた。
29年度が最終年度であるため、記入しない。
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