研究課題/領域番号 |
15H05262
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
前田 健 山口大学, 共同獣医学部, 教授 (90284273)
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研究分担者 |
鍬田 龍星 山口大学, 理工学研究科, 研究員 (00711219)
下田 宙 山口大学, 共同獣医学部, 助教 (40719887)
高野 愛 山口大学, 共同獣医学部, 准教授 (90700055)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日本脳炎ウイルス / ダニ媒介性脳炎ウイルス / Langatウイルス / ボレリア / 蚊 / ダニ |
研究実績の概要 |
モンゴルを含むシベリアからヨーロッパにかけて分布するダニ媒介性脳炎ウイルス(TBEV)に近縁なウイルス遺伝子を本州のイノシシから発見した(Yamaguchi virusと命名)。Langatウイルスに近縁だったため、Langatウイルスを用いて血清疫学調査を実施した結果、西日本のイノシシを中心に感染が流行していることが判明した。 モンゴルのロシアに近いKhuvsgul州の牛100頭と馬50頭、Serenge州の馬50頭の日本脳炎ウイルスとダニ媒介性脳炎ウイルスに対する抗体価を調査した結果、牛で1頭、馬で2頭TBEVに感染していることが判明した。一方、日本脳炎ウイルスに対して抗体を有している動物はいなかった。モンゴル北部には、日本脳炎ウイルスがいないことが示唆された。 モンゴルの蚊の捕集をしたところ、イナトミシマカ、ハマダラカ、セスジヤブカが捕集された。一方、Dermacenter nuttalliを300頭以上捕獲して、フレボウイルスおよびフラビウイルス共通プライマーで検出を行っているが現在陽性は出ていない。 モンゴル国北西部のKhuvsgul州および北部のBulgan州にて採取されたシュルツェマダニ191検体を用いて、1個体毎にボレリア属細菌遺伝子検出とBSK-M培地を用いた分離・培養を行った。その結果、両州とも4%のマダニが新興回帰熱病原体を保有していることが明らかとなった。また、分離に成功した株について、多領域DNA配列型別法を実施した結果、モンゴル国で分離された株全てが日本の北海道で分離された株と100%一致した。以上の結果から、モンゴル国北西部においても北海道と同じ遺伝型の菌が浸潤していることが示唆された。来年度は国内の渡り鳥の繁殖地にて調査を行い、アジアからの節足動物媒介感染症の国内侵入経路の解明につなげたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ウイルスの疫学調査により、日本脳炎は北部モンゴルにはいない可能性が示唆された。今後は北部に関してはダニ媒介性脳炎ウイルスに焦点を絞るべきであると判明した。しかし、蚊の捕集数があまり多くないのは唯一の問題といえよう。来年度は時期をずらして捕集すべきであると思われた。ダニに関しては十分な個体数を捕集することができ、現在も解析中である。 また、ボレリアに関しては、分離・遺伝子検出に成功し、北海道と共通のボレリアの存在が示唆されており、北海道とモンゴルの間のダニ媒介性病原体の交流が示唆された。このように、北海道とモンゴルの病原体の行き来の可能性が示されたことは、本年度の大きな成果と言える。
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今後の研究の推進方策 |
日本脳炎ウイルスに関しては南部モンゴルに焦点を絞って解析する。北部モンゴルはダニ媒介性脳炎ウイルスに焦点を絞って調査する。東部モンゴルや西部モンゴルにも採材に行く必要がある。 野生動物であり、比較的捕獲しやすいネズミを調査することにより、その地域の特性が理解できる可能性もあるので、ネズミの調査もH28年度は計画に入れる。 蚊の捕集に関しては、時期をずらして採集を考えている。 ダニでの調査に関しては、継続してウイルス遺伝子検出を行っている。 日本とモンゴルでボレリアが共通であったことから、両国を結びつけるものは渡り鳥によりダニが運ばれてきたと考えている。渡り鳥の営巣地などでマダニの調査を行う予定である。
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