研究課題/領域番号 |
15H05262
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
前田 健 山口大学, 共同獣医学部, 教授 (90284273)
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研究分担者 |
鍬田 龍星 山口大学, 共同獣医学部, 学術研究員 (00711219)
下田 宙 山口大学, 共同獣医学部, 助教 (40719887)
高野 愛 山口大学, 共同獣医学部, 准教授(テニュアトラック) (90700055)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日本脳炎ウイルス / ダニ媒介性脳炎ウイルス / マダニ / 蚊 / 渡り鳥 / ウシ / ウマ |
研究実績の概要 |
申請者らはマダニ媒介性の重症熱性血小板減少症候群(SFTS)ウイルスを国内で最初に発見した。今年、蚊媒介性のデング熱ウイルスが国内に侵入し、節足動物媒介性感染症の脅威が改めて高まっている。これら感染症の海外からの侵入経路としてマダニや蚊などの節足動物(ベクター)、ならびに渡り鳥とヒトによる持ち込みが挙げられる。本研究は、従来手薄であった北アジアからの節足動物媒介性感染症の侵入の可能性に関する科学的知見を得る事を目的とする。具体的には、北アジアの拠点として研究協力体制が整っているモンゴルにおける節足動物媒介性感染症の調査を実施し、遺伝学的及び疫学的解析手法を用いて国内調査結果と比較する。 本年度は、1.モンゴルで2012年から2015年にかけてウマから回収した血清を用いて抗JEV抗体と抗LGTV抗体の保有状況を調査した結果、それぞれ338頭中13頭(3.8%)と300頭中9頭(3.0%)が陽性となった。2.モンゴルで2007年と2014年から2015年にかけて牛から回収した血清を用いて抗JEV抗体と抗LGTV抗体の保有状況を調査した結果、それぞれ325頭中13頭(4.0%)と300頭中4頭(1.3%)が陽性となった。3.モンゴルで2014年から2015年にかけてウマから回収した血清を用いて抗ゲタウイルス抗体の保有状況を調査した結果、270頭中17頭(6.3%)が陽性となった。4.隠岐の島では282頭のフタトゲチマダニ、福島の磐梯山からはキチマダニとシェルチェマダニを中心に43頭捕集したが、ウイルス分離は陰性であった。5.北海道・新潟・鹿児島で渡り鳥に付着したマダニの回収を行った。723頭が捕集されウイルス分離に供した結果、パブロフスキーマダニBT-79とアカコッコマダニBT-450からウイルスが分離された。BT-450はMukoウイルスであることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今回、渡り鳥に付着したマダニから2種類のウイルスの分離に成功した。1種類は未知の感染症の可能性がある。 日本脳炎ウイルスおよびランガットウイルスに対する抗体保有率はかなり低いのが特徴であったが、ゲタウイルスが東モンゴルで高確率に感染していることが判明した。ゲタウイルスの感染を日本とモンゴルで比較することは興味深い。 モンゴルのダニ・蚊からはウイルス分離ができていないのが残念であるが、想定の範囲内である。
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今後の研究の推進方策 |
渡り鳥における調査は今後も継続予定である。 モンゴルのウマからゲタウイルスの遺伝子検出を試みる。日本株は2014年の流行の際に分離されている。 モンゴルのダニと蚊からのウイルス分離を継続する。 東モンゴルの蚊媒介性感染症の調査を重点的に行う。 西モンゴルの動物における節足動物媒介感染症の調査を重点的に行う。
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