研究課題
[全体構想]フィリピンを中心に東南アジアは近年著しい経済成長を遂げ、日本への農畜産品の輸出も急増している。しかし、この地域における種々の感染症は、家畜の生産性向上を妨げる最も重要な位置を占める。とりわけ、マダニ媒介性感染症による被害は深刻とされ、その実態解明が喫緊の急務となっている。本研究は日本と貿易が盛んなフィリピンにおけるマダニとマダニ媒介性動物感染症の流行の実態を明らかにし、日本の輸入検疫体制強化とフィリピンの診断・予防技術の向上と普及に資することを目的として実施する。[今まで得られた成果」フィリピンマニラ周辺地域(カラバルソン地方)における牛のマダニ媒介性感染症の流行実態を調べた。フラッギング法によるマダニ採取と計250頭の牛より血液サンプルを採集し、DNA並びにRNAを抽出した。また、血液については血液塗抹による病原体の確認を行った。その結果、アナプラズマ特異PCR法、バベシア特異PCR法、タイレリア特異PCR法を用いて実験を行ったところ、アナプラズマ、バベシア、タイレリアのDNAが一部のサンプルに検出された。血液塗抹についてはアナプラズマ様虫体が観察された。しかし、フラビウイルス特異的PCR法を用いたフラビウイルスRNAの検出を試みたが、マダニ並びにウシの血液については陰性であった。陽性サンプルついてはDNAのシークエンスを行い、アナプラズマ、バベシア、タイレリアの種の同定を行った。これらの結果により、フィリピンマニラ周辺地域の牛にはマダニ媒介性感染症であるアナプラズマ、バベシア、タイレリア感染症が流行している可能性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
当初の期待と同程度の進捗および結果が得られており、順調に研究が進展していると考えられるため。
平成28年度の現地調査によって検出されたアナプラズマ・バベシア・タイレリアDNAについてシークエンス解析後、種の同定を行い、DNA診断法の確立を行い、診断キットの製作並びに予防・治療法の確立を最終目標とする。フラビウイルスについては、PCR法によるRNAの検出だけではなく、ウシ血清中に含まれるフラビウイルスに対する抗体の検出を間接蛍光抗体法によって調査する。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (7件) 図書 (1件) 備考 (1件)
Dev. Comp. Immunol.
巻: 68 ページ: 98-107
10.1016/j.dci.2016.11.013.
Vet. Prasitol.
巻: 233 ページ: 39-42
10.1016/j.vetpar.2016.11.020.
Ticks Tick Borne Dis.
巻: In press ページ: In press
Sci. Rep.
巻: 6 ページ: 37039
10.1038/srep37039.
http://www.vet.kagoshima-u.ac.jp/kadai/V-Infection/sinkoukansen/index.html