研究課題/領域番号 |
15H05265
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
荒木 英樹 山口大学, 創成科学研究科, 准教授 (90346578)
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研究分担者 |
桂 圭佑 東京農工大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (20432338)
坂口 敦 山口大学, 創成科学研究科, 助教 (50747558)
関谷 信人 三重大学, 生物資源学研究科, 准教授 (80456590)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | アフリカ / タンザニア / 灌漑稲 / 天水稲 / 多収 / 節水 / 後期重点施肥 / JICA |
研究実績の概要 |
本研究では,タンザニア国における稲作において,灌漑稲では多収化と節水を達成することで,天水稲では多収化を図ることで,現地の水利用効率を高めようとするものである.2016年度は, 6月からの作期および12月からの作期にキリマンジャロ農業訓練センター(KATC)の試験圃場において,4つの試験を実施した. 灌漑稲の慣行施肥法では,窒素施肥量の50%が移植後14日後,残りの50%が出穂前およそ30日前に投入することとなっており,生育後半の肥切れが低収要因の一つになっていると考えられる.そこで,試験1と試験2では慣行施肥区と後期重点施肥区を設け,試験1では窒素施肥量を増肥することによる効果,試験2では後期重点施肥でかつ密植することによる増肥効果を検証した.6月からの作期の試験では天候不順や渇水があり良い結果は得られなかった.12月の試験では,後期重点施肥では登熟期に葉色が濃く推移しており,増収が期待された(現在解析中). 試験3では現地に適した節水方法を提案することを目的として,間断灌漑(AWD),エアロビック法,SRI法と従来の慣行灌漑管理法とで比較した.結果としては,いずれも現地の土壌水分保持力が低く,これら節水処理区では土壌乾燥のため,十分な生育量が得られなかった.試験4では土壌改良材(とくに堆肥)の効果を検証しており,12月からの作期試験では無改良圃と比べて明らかに生育が優れていた. 2017年からは,KATCが位置するLower Moshi地区における灌漑水田エリアにおいて,用水路の用水深を測定することにより,灌漑エリアに供給されるトータルの水量を算出できるようデータを取り始めている. 天水稲の研修に関しては,2015年までに実施した現地実証試験に基づき,研修のベースとなるテキストが完成した.現在,このテキストはJICA専門家チームの研修で活用しつつ,改良を進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
灌漑稲に関する試験では,2016年度は計画していた2期作分を実施できた.ただし,6月からの作期では現地で天候不順や用水の渇水などがあり,生育全般はあまりよくなかった. 天水稲に関しては,2015年度までの現地実証試験により研修で必要な基礎技術の洗い出しが完了した.2016年は,この成果を統計学的に分析し,畝たてや均平作業の重要性を統計学的に明らかにすることができた.今後はこの成果を論文公表や学会発表する予定である.また,実証試験の成果に基づきテキストも作成しており,現在,このテキストを用いながら研修を実施している. Lower Moshi灌漑地区における用水量のモニタリングでは,現地の灌漑施設管理者と契約することにより,用水路の構造を熟知した技師により,定期的に用水深を測定するシステムができた.
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今後の研究の推進方策 |
2017年度は,灌漑稲作に関しては2015年度から継続して栽培試験を実施し,慣行栽培に比べて安定的に多収となる施肥管理方法を明らかにする.また,作期によっては施肥量や施肥時期を変更しても多収とならない時があることから,気象条件などを解析し,収量が頭打ちになる要因を明らかにする.節水栽培や土壌改良試験に関しても,2016年度と同様に実施する.また,Lower Moshi地区の用水量を把握するためのモニタリングも継続して行う. 天水稲に関しては,実証試験の結果がおおむね解析できたことから,JICA専門家と協議しながら成果公表に向けて論文公表や学会発表を行う.また,現地の訓練を協力者である現地教官とともに実施し,マニュアルの改訂案を作っていく.
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