研究課題/領域番号 |
15H05271
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
徳永 勝士 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 教授 (40163977)
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研究分担者 |
莚田 泰誠 国立研究開発法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, グループディレクター (40392146)
野内 英樹 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 客員研究員 (60437845)
大前 陽輔 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 特任研究員 (70722552)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ゲノム / 遺伝統計 / 感染症 / 遺伝子 / 医療・福祉 / 結核 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、ゲノム情報を用いて結核症の感受性遺伝子を探索するとともに、それを診断および治療に繋げることである。
東京大学大学院医学系研究科人類遺伝学分野は、理化学研究所、結核予防会、タイ保健省医科学局、インドネシアヤルシ大学等のアジアの研究者チームと共同して結核症の関連遺伝子研究ネットワークを形成してきた。本研究計画では、我々のグループが新たに開発した多因子疾患の感受性遺伝子探索の為の統計解析法を日本とタイの結核症サンプルに適用し、その有用性を検証する。更に、解析法を国際結核人類遺伝コンソーシアム(International Tuberculosis Human Genetics Consortium: ITHGC)のサンプルに対して適用することで、集団間の違いを考慮した結核症の遺伝要因の解明を目指している。
2016年度はITHGCで結核症例15,573、対照例24,843と高い同定力に基づいた一塩基多型(SNP: Single Nucleotide Polymorphism)毎の基本的なメタ解析にて、新しい結核症感受性遺伝子領域を国際共通で2箇所、地域特有で4箇所発見した。我々はそのReplication studyを日本とインドネシアの結核症サンプルを使用し、DigiTag2にて実施した。Logic Regressionに基づくSNPセット解析法では関連SNPが遺伝子レベルで議論される事が多い中、ゲノム上で離れたEnhancerが標的とする遺伝子のPromoterに作用して遺伝子発現に貢献する点に注目し、EnhancerとPromoterに関わる生物学的データベースの情報を活用することで、最大3つの論理的なSNPの相互作用をLogic regressionで同定する方法を開発し、米国人類遺伝学会で発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
タイの結核GWASデータの他に日本の結核GWASデータの利用を開始した。また、並行して2016年度は複十字病院の臨床データを整備し、追加のGWASデータの取得を完了した。
国際結核人類遺伝コンソーシアム(International Tuberculosis Human Genetics Consortium: ITHGC)を運営しているOxford大学Hill教授とVivek博士を含めたITHGCの会議を2016年4月4日に京都で実施した。ITHGCのデータは結核症例15,573、対照例24,843となり、高い同定力に基づいた一塩基多型(SNP: Single Nucleotide Polymorphism)毎の基本的なメタ解析にて、新しい結核症感受性遺伝子領域を国際共通で2箇所、地域特有で4箇所発見した。我々はそのReplication studyを、日本とインドネシアの結核症サンプルを使用してDigiTag2法にて実施した。
Logic Regressionに基づくSNPセット解析法については、関連SNPが遺伝子レベルで議論される事が多い中、我々はPathwayレベルでの解析法を新たに提案し[J. of National Cancer Inst.2015]、徳永研究室で保有のPBC症(原発性胆汁性胆管炎)のデータに適用することでその有用性を確認している。2016年度は更に、ゲノム上で離れたEnhancerが標的とする遺伝子のPromoterに作用して遺伝子発現に貢献する点に注目し、EnhancerとPromoterに関わる生物学的データベースの情報を活用することで、最大3つの論理的なSNPの相互作用をLogic regressionで同定する方法を開発し、米国人類遺伝学会で発表した。
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今後の研究の推進方策 |
我々がこれまで蓄積してきた新たな解析法を活用したゲノムワイド関連解析(GWAS)をタイおよび日本のデータにて進める。国際結核人類遺伝コンソーシアム(International Tuberculosis Human Genetics Consortium: ITHGC)を主宰しているOxford大学Hill教授を京都での国際人類遺伝学会に招聘した際、実質的な運営に携わるVivek博士も同時に招待して4月4日に打ち合わせ会議を開催し、SNP毎の基本的なメタ解析に続いて、より高次の統計解析法をITHGCのデータへ応用することで合意を得た。具体的には、Logic regressionによる解析、HLA imputationによる解析をITHGCのデータへ応用していく。
Logic Regressionに基づくSNPセット解析については、EnhancerとPromoterに関する生物学的データベースの情報を活用し、最大3つのSNPの論理的な相互作用を同定する我々の新手法を、今後はタイ結核GWASデータに対して実施する。また、安井教授の下に留学中の日本人のポスドクにより、空間ベイズ的モデルによるLogic regressionの改良も進められているので、開発され次第、日本とタイの結核GWASデータに適用する。
その他の新解析アプローチとして、我々の開発したHLA imputation法を活用した解析を結核症GWASデータにも適用する。結核菌ゲノム情報を活用した解析に関しては、我々は宿主ゲノムと結核菌ゲノムの両方の大規模データを保有する世界でも数少ない研究グループであるので、ヒトゲノムと菌体ゲノムとの相互作用の解析を進めていく。
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備考 |
研究内容の項目の中で結核プロジェクトに関する説明をしているhttp://www.humgenet.m.u-tokyo.ac.jp/research/1-5.html
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