研究課題
マラリアは今もなお世界中で猛威を奮う感染症である。その病態は宿主の免疫応答との相互作用もあり非常に多彩であり、マラリアの予防・治療の開発には病態の理解は必要不可欠である。申請者らはこれまでに、マウスモデルを用いてマラリアの免疫病態について研究を進めており、近年、腸管寄生蠕虫のマラリアへの影響、さらにはマラリアの腸内細菌への影響など、マラリアと腸管の関連性を見出してきた。本研究ではこれらのマウスモデルで得られたマラリアと腸管と腸管寄生蠕虫との相互関係を、ウガンダにおいてヒトで検討を試みる。平成27年度は、5月と10月にウガンダ国の北部、グル市において、ウガンダ第二の規模を持つグル大学の医学部、北部ウガンダの基幹病院であるラチョー病院と連携して約150名からのマラリア患者からのサンプルを採取した。マラリア患者での軽症例と重症例の比率、重症例における消化管症状の発症率、蠕虫の感染率等の基礎的なデータを得ることができた。得られた血液サンプル、糞便サンプルは12月に現地から空輸され、国内での解析を行った。糞便からはDNAを抽出しそれをテンプレートし全ての細菌の16S rRNAをコードする遺伝子を増幅する。増幅された遺伝子の配列を全て読み込み、その配列の違いによって菌種を同定、半定量をおこなった。マラリアに感染していない対照患者との比較で、外来を訪れたマラリア患者の糞便中の細菌叢に大きな変化は認められなかった。
2: おおむね順調に進展している
現地でのセットアップが想像よりもスムーズに行き、サンプリングができる体制が整った。最終的なサンプルの空輸に手間取った誤算はあったものの、ほぼ順調に研究を進められた。
基本的には当初の予定通りに研究を進めるが、蠕虫の感染率が約10%と想定よりも低く、解析の対象とするのが困難と思われた。当地での糞便中の虫卵検出による蠕虫の診断は取りやめ、国内での糞便DNAを用いたPCR診断を行うこととした。また、外来患者のみを対象としていたが、それほどの変化が見られなかったこと、また我々がマウスで見出した、マラリアにおける腸内細菌の変調も、脳マラリアを起こす重症マラリアで顕著であったこともあり、重症例が多い入院患者も対象とする。H28年度も2回現地でのサンプリングを予定しているが、これから得られる結果によっては1度のサンプリングとなる場合もある。
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Scientific Reports
巻: 5:15699 ページ: 1-12
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Frontiers in Microbiology
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