研究実績の概要 |
トキソプラズマの中国株については、分泌型病原性因子に着目して解析した。既知の病原性因子の配列を中国分離株とI/II/III型株の間で比較した。またB6由来のマクロファージに原虫を感染させ、LPSなどTLRリガンドによる炎症性サイトカインの産生を抑制されたことから、ROP16が原因候補遺伝子であると考えられた。また高病原性I型原虫のようにIFNγ刺激により原虫数が低下しなかったことから、ROP5, ROP17, ROP18やGRA7が原因遺伝子候補として挙げられ、マクロファージ感染における免疫学的解析から調べる病原性因子を絞り込bんだ。この結果、それらの配列はI型原虫であることが分かった。さらに、I型あるいはII型由来のROP16、ROP18、GRA6、GRA15、GRA16, GRA24は宿主因子であるStat3, ATF6β, NFAT4, NFκB, p53, p38にそれぞれ活性化あるいは不活化することが分かっているため、中国分離株のマクロファージ感染によって、それらの宿主転写因子・シグナル伝達分子の活性化(核移行・リン酸化)や不活化(分解)などをウェスタンブロット法やIFAにより検討した。さらに転写因子の活性化に影響がある病原性因子については、中国分離株の病原性因子を哺乳類細胞用の発現ベクターに組み込み、哺乳動物細胞である293T細胞に過剰発現させ、転写因子依存的なルシフェラーゼレポーターを使用した機能アッセイにより、決定的な塩基配列多型によるアミノ酸置換・欠損変異を検討した結果、I型原虫で見られた変異に最も近いことが分かった。
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