研究課題
ケニア・ビクトリア湖岸のビタ地区において、9月1日から10月16日の間マラリア原虫感染と免疫応答に関する調査研究を行った。調査は、研究分担者の熱帯医学研究所濱野教授グループと共同で行い、同時に住血吸虫感染に対する免疫応答の調査も行った。調査のための倫理委員会審査や現地との交渉、調査方法などは濱野教授が進め、これに則り調査を行った。研究に必要なプラスチック製品や試薬類は、事前に送付したが、貴重な試薬については持参した。現地では、数校の小中学校の学童を対象とし、インフォームドコンセントを得たボランティア約160名から各約6mlのヘパリン採血を行った。マラリア原虫陽性の判定は、Rapid diagnosis testキット及び血液スメアのギムザ染色標本を顕微鏡で観察して調べた。血液はリンフォプレップにより末梢白血球分画(PBMC)を獲て、一部はフローサイトメトリー解析を行い、T細胞分画、B細胞分画、樹状細胞の比率などを調べた。残りの細胞は蛍光色素CFSEでラベルした後、CD3/CD28ビーズ、熱帯熱マラリア原虫抗原、非感染赤血球で刺激して培養、その後上清を集め、残りの細胞は表面抗原を染色した後フローサイトメトリー解析を行い、増殖した細胞の種類を調べた。培養上清は、ELISA法によりIL-2、IL-10、IL-13、IL-27、IFN-gamma量を調べた。現地では、度重なる停電や温度管理の問題、水の問題など数々の問題を乗り越えて、末梢血白血球のフローサイトメトリー解析と培養に成功し、今後現地での免疫応答調査の道筋をつけることができた。データの集計は、まだ終了していないが、このデータをもとに今後の実験計画を立てる方針である。
2: おおむね順調に進展している
ケニア・ビタ地区には長崎大学・熱帯医学研究所の研究拠点があり、CO2インキュベター、安全キャビネット、遠心機、フローサイトメーター、顕微鏡などの設備は整えられている。今回、これらの機器をフルに利用し、実際に現地で末梢血白血球のフローサイトメトリー解析や培養ができるようになった。実験室といっても毎日複数回の停電、同じ部屋で糞便を用いた検査を行うなど、決して恵まれた環境ではないが、様々な問題点を一歩一歩クリアして実際に抗原特異的免疫応答のデータを集めることが可能であることを示した。これらの点は、大きな進歩である。
平成27年度調査のELISAデータがすべて出揃っていないので、まだ結論を出すのは早計であるが、現時点ではT細胞のIL-27産生を示すデータは得られていない。対象としたのが学童であったため、マラリア原虫感染者は数多く見られたが、原虫血症のレベルが極めて低く、IL-27産生T細胞の誘導に至るレベルになっていなかった可能性が考えられる。今後は、前回のフィールド調査をフォローすることに加え、診療所を訪ねるマラリア患者に対象を広げるなどにより、IL-27産生T細胞の存在を明らかにしたい。
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