研究課題/領域番号 |
15H05278
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
菊池 三穂子 長崎大学, 熱帯医学研究所, 講師 (40336186)
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研究分担者 |
千種 雄一 獨協医科大学, 医学部, 教授 (20171936)
本間 季里 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 准教授 (70307940) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 日本住血吸虫 / フィリピン / 肝線維化症 / 高リスク集団 / 予防法・治療法 |
研究実績の概要 |
フィリピンの日本住血吸虫は、未だに81州中の28州に有病地が存在し、年間1200万人が感染のリスクがあるが、プラジカンテルによる集団治療以外の有効な対策はとられていない。これまでの代表研究者らの調査により、フィリピンの日本住血吸虫症浸淫地での30歳以下の若年性肝線維化症には、免疫応答に関わる遺伝要因、高い再感染率が発症要因になっていること明らかとなった(ハイリスク集団)。日本住血吸虫に繰り返し感染する事によって発症する肝線維化症は重篤な症状を示すが、未だに有効な治療法や予防法は確立されていない。本研究は、この現況を憂慮し何らかの対策を講じる為に肝線維化症ハイリスク集団を対象とした4年間のコホート研究により患者の病態解析及び発症に関わる免疫応答性を検討し早期診断、発症予防法や治療法などの確立を目的とした。 これまでに、フィリピン・ソルソゴン地区で、再感染高リスク集団と考えられたBolos, Tulay、ローリスク集団のMakawayan, Monbonの計4地域に居住し同意が得られた15~30歳の対象者400~500名を登録し、フォローアップを継続して行った。前年度の調査結果から、感染率は未だ高いものの、適切な対策の効果で肝線維化症は高くないのではないかと考えられたレイテ島(サン・ビンセント、サン・アントニオ地区)での調査結果を元にローリスク集団として15~30歳の200名を登録し、インフォームドコンセントの得られた対象者に対してフォローアップを行う作業を現地研究協力者の協力のもとに開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
高度浸淫地であるソルソゴンでは、フォローアップが2年行われており、順調に進んでいる。中等度浸淫地であるレイテ島では、リストアップが済み、インフォームドコンセントを得る作業に入った。ダバオ島は感染率も高く、肝線維化症頻度も高い高度浸淫地であり、若年層にも肝線維化症が散見されたことからハイリスク集団であることが示唆されたが、現地の治安の悪化から、この地域での調査の継続が難しい事が現地共同研究者から示唆されたので、他の地域を候補とすることにした。新規調査地の候補として2015年の調査で8%程度の虫卵陽性率を示したミンドロ島の浸淫地の調査データを元に、対象者のリストアップを試みた。このリストを元にインフォームドコンセントを得る作業を開始した。また、7月には協力研究者であり、フィリピン大学の学生であるイアン・タビオスが1か月、長崎に来日し収集した試料の、血中抗体価、バイオマーカーの解析を行った。この結果については、現在解析中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の結果を踏まえて、ミンドロ島、レイテの各島での対象者のリストアップを行い、インフォームドコンセントを得た上で、住民に対して虫卵検査、血中抗体価検査、超音波検査等のフォローアップを行い、各地域の感染状況を把握する。同意が得られた15から30歳の対象者からは、プラジカンテル投与前、投与1日後、2週間後、6か月後に5mlの採血を行い、血中抗体価検査の他に活動性感染診断や、尿中の血中の肝線維化症重症度モニタリング用のマーカーなどの測定・評価、免疫応答性解析の試料とし、一部をDNA多型解析用の試料とする。ソルソゴンでは、フォローアップが継続していることから、肝線維化症診断マーカーの評価の為の詳細な解析を行う。また、検出感度の低いKato-Katz法を用いた便中虫卵検査に変わる活動性感染診断として、尿中に含まれる日本住血吸虫由来のフリーDNAをLAMP-PCR法を用いて検出し、現地での迅速診断に応用可能であるかどうかを判定する。この方法については、研究代表者がすでに、マンソン住血吸虫症患者の尿を用いて、現地サイド(特別な機器を用いない)での検出法を確立しており、これを日本住血吸虫症に応用することが可能であると考えている。
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