研究実績の概要 |
ミャンマーの医療施設では多剤耐性菌の蔓延が危惧されているが、その実態は全く明らかになっていない。本研究では、ミャンマーの医療施設における薬剤耐性因子を同定し、多剤耐性グラム陰性菌の実態を明らかにするとともに、全ゲノム解析による分子疫学を実施してきた。ミャンマーの国立衛生研究所(National Health Laboratory)と共同で多剤耐性グラム陰性細菌を収集し、菌株の分離、菌種同定および薬剤耐性プロファイルを作成した。ミャンマーの医療施設で分離されたグラム陰性細菌の分離・収集は、ミャンマーの17医療機関から合計536株の薬剤耐性菌を分離した。当初はミャンマー3医療機関(ヤンゴン総合病院、新ヤンゴン総合病院およびヤンゴン小児病院)との共同研究であったが、2017年10月現在ではミャンマーの17医療機関にまでAMRネットワークを広げることができた。3年間で合計600株の分離・収集を目的としてきたが、目標の分離数には少し不足していた。 分子疫学解析においては分離株すべてを次世代シーケンサで解析することができた。その結果、カルバペネマーゼをコードする遺伝子においてはヨーロッパ型、インド型およびアジア型のメタロ-β-ラクタマーゼが混在していることが明らかとなった。また、これらのカルバペネマーゼ産生菌はアミノグリコシド高度耐性に関与する16S rRNAメチラーゼをコードする遺伝子armA, rmtB, rmtCおよびrmtD3を保有していた。この内、rmtD3はRmtDの新規バリアントであり、RmtD3とRmtDのアミノ酸配列比較から9つのアミノ酸変異(Trp26Cys, Val39Ala, Met66Leu, Ser102Ile, Thr130Ala, Asn165Asp, Leu169Met, Ala181Thr and Gly236Ser)が認められた。
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