研究課題/領域番号 |
15H05283
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
伊藤 誠 愛知医科大学, 医学部, 教授 (90137117)
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研究分担者 |
濱野 真二郎 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (70294915)
高木 秀和 愛知医科大学, 医学部, 講師 (90288522)
東城 文柄 東京大学, 空間情報科学研究センター, 特任研究員 (90508392) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | リンパ系フィラリア症 / 尿 / ELISA / スリランカ / Culex quinquefaciatus / PCR |
研究実績の概要 |
1.スリランカ東海岸のリンパ系フィラリア症未調査地における調査の継続 1-1.昨年度、内戦の影響でこれまでリンパ系フィラリア症の調査が行われてこなかった、スリランカ東部のTrincomalee周辺で、約2,000人の小学生を対象にした尿による抗フィラリアIgG4抗体調査で、抗体陽性者を発見した。これをさらに確認するため、抗体陽性であった児童の自宅周辺の住民を対象に、尿中の抗フィラリアIgG4抗体検査と、血液中のフィラリア由来抗原の検出を行った。さらにPCRによるフィラリア幼虫の検出を目的として、媒介蚊の採取を行った。合計630人の住民を検査し、1.4%に当たる9人が抗原陽性と判定された。この結果は現在もフィラリア感染が継続している可能性を示唆している。集められた11,340匹の媒介蚊は現在検査中である。 1-2.陽性者が見つかったことから、範囲を広げて小学校調査を行った。全生徒358人から尿を採取するとともに、GPSロガーを全生徒に配布し各生徒の住居を地図上にプロットした。尿中の抗体価は現在測定中で、これを組み合わせればリスクマップが作成できるのではないかと考えている。 2.リンパ系フィラリア初期感染ならびにBrugia malayi感染を検出するための新たなリコンビナント抗原の作成 スリランカではリンパ系フィラリア症に対する対策が終了し、患者数は激減している。このように感染の機会が少なくなった状況では、これまでのフィラリア抗原に対するIgG4抗体に加えて、IgG4が出現する前の感染初期から検出できる抗体検出系が必要とされる。そのための抗原としてこれまでのリコンビナント抗原、SXP1にフィラリアのendochitinaseを融合させたリコンビナント抗原を作成した。また、マレー糸状虫感染も同時に検出できるように、SXP1とマレー糸状虫診断用のBmR1抗原の融合タンパクを作成した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
内戦の影響でリンパ系フィラリア症の調査が行われていなかった、スリランカ東部のTrincomaleeでの調査で陽性者が見つかったことから、この地区で重点的に調査を行った。ここでの調査結果から、小学生を対象とした尿によるフィラリア症のスクリーニングが有効であることが確認できた。しかし、Trincomaleeに調査を集中させたため、予定していたMatara地区での定点調査を再度延期せざるを得なくなった。
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今後の研究の推進方策 |
1.省力的なGPSロガーを使った小学生の住居の位置情報の収集と、尿中抗フィラリア抗体価の検査結果を組み合わせ、空間分布を把握する新たなシステムを完成させる。これによりリスクマップを作ることができれば、フィラリア対策に大きく貢献できると考えられる。 2.新たに作成した融合タンパクを使い、より早い段階での感染の発見と、再燃が危惧されているBrugia malayi感染の検出を試み、スリランカのフィラリア症根絶に貢献できる新たな尿検査を開発する。
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