研究課題
ダイオキシン類(DXN)の人体影響に関して、我々は2002年以降ベトナムで疫学調査を継続し、1)枯葉剤暴露より30年以上経過しても、汚染地区の母乳中DXN 濃度は対照地区より有意に高い。2)母乳中DXN と母親の血清・唾液中ステロイドホルモン(SH)や児の唾液中SH との間に関連性を認めた。本研究の目的は、1)継続中及び新規のコホート研究より、母乳中DXN の児の唾液中SHへの影響を明らかにする。2)タンデム法によるSH の精密分析をベトナム国内で確立する。3)母乳中のDXN 以外の残留性有機汚染物質(POPs)を計測し、複合汚染の実態を解明する。本研究により、唾液中SH の環境疫学研究における有用性を示し、DXN 暴露等による早期健康影響指標として普及させる。また、コホート研究により小児の成長や二次性徴への影響を継続的に解明する。平成28年度には、対照地区であるハノイ近郊のKim Bangで追跡中5歳児48名から唾液と血液を採取し、成長状況を身体計測と質問紙調査・診察により確認した。採取した生体試料中のステロイドホルモンについて、前年度に採取したダイオキシンのホットスポットのBien Hoaの5歳児の試料と合わせて、ハノイにある共同研究機関で測定するため、現在冷凍保存している。昨年度までの調査結果について、2016年度の研究成果として、3編の原著論文と1編の編集者への回答文が国際誌(Environmental Science and Pollution Research;IF=2.76 Science of the Total Environment; IF=3.98)に掲載された。また、2016年8月にイタリア・フィレンチェで開催された第36回ダイオキシン国際会議で発表した。国内学会においても、2017年3月に宮崎で開催された日本衛生学会で報告した。
2: おおむね順調に進展している
平成28年度には、対照地区であるハノイ近郊のKim Bangで追跡中の5歳児48名全員から唾液と血液を採取し、成長状況を身体計測と質問紙調査・診察により確認した。採取した試料は、ハノイにある共同研究機関で測定するため、現在冷凍保存中である。昨年度までの調査結果について、2016年8月にイタリア・フィレンチェで開催された第36回ダイオキシン国際会議で発表した。また、国内学会においても、2017年3月に宮崎で開催された日本衛生学会で報告することができた。
ベトナムでの現地調査を9月に、ダイオキシンのホットスポットの1つであるBinh Dinh 省Phu Cat と、対照地区のベトナム北部Ha Nam 省Kim Bang 地区(ハノイから南に30kmの農村地帯)で実施中の【第1 次コホート研究】の9歳児を対象に、さらに、もう1つのダイオキシンのホットスポットであるHo Chi Minh 市に隣接するBien Hoa で実施中の【第2 次コホート研究】の7歳児を対象にして、身体計測等と唾液・血液を採取し、凍結保存後、ハノイに搬送する。現地でのステロイドホルモン分析体制を確立し、保存試料も合わせて速やかに分析する。前年度までのコホート研究の成果を2017年8月にカナダ・バンクーバーで開催されるダイオキシン国際会議で発表する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 1件)
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