研究課題
ケニアにおけるロタウイルスワクチン導入に関連して、下痢患者由来のロタウイルス株の変異の実相解明を行うためにジェノタイピングを行い、さらにロタウイルス感染モードの解明を行うことが本研究の目的である。ケニア、キアンブ県立病院におけるロタウイルス感染症の発生に関する数年間のデータとその地域の気象条件との関連について時系列解析を行ったが、患者データ欠損のため、解析不能であった。患者発生のデータの精度を向上させるために患者情報が迅速に得られる様、検体採取の方法を抜本的に変更し、2015年11月から新たに検体収集を開始した。ロタウイルスケニア株のジェノタイピングでは、G1P8が76%を占め、G3P6(9%)、G8P4(3%)、G1P4(2%)、G1P6(1%)であることが分った。そしてタイピング不能株が9%であった。また2014年7月のワクチン導入後から、下痢症に占めるロタウイルス感染症は優位に減少し(27.5%→15.3%)、ワクチンの効果があることが示された。また発症年齢分布についてもピークがより高い年齢層にシフトすることが判明した。環境中からのウイルスの検出の試みについては、4種のメッシュのサイズ(1.0、1.8,4.0,8.0μm)のMetal Mesh Device (MMD)を用いて一定量の空気を採取し、環境中に含まれるウイルス粒子の検出についてその検出条件の検討を行った。特に土壌中に含まれるPCR阻害物質については、OneStep PCR Inhibitor Removal Kitを用い、PCR法については、semi nested, nested PCRを用いて検出したところ、VP7, VP4 遺伝子が検出される条件を見出すことができた。この条件をさらに検討し、空気中のウイルス粒子の検出システムの確立を行っていきたい。
1: 当初の計画以上に進展している
ロタウイルス感染症の発生のデータとその地域の気象条件との関連についての時系列解析については不成功に終わったが、患者データ欠損をできるだけ少なくするようなデータ採取法を用いて再び開始した。一定期間検体採取を行った後、時系列解析による分析を再度試みる予定である。下痢症の患者検体のロタウイルス株のジェノタイピングについては、極めて順調に進行しており、ワクチン導入前後のウイルス株の実相が明らかになり、かつワクチン株の効果についても判定が可能であることが示唆されている。また環境中からのウイルス粒子検出の試みも非常に順調に推移しているため上記の判定とした。
患者検体の採取および環境中からの空気検体採取を継続して行い、ロタウイルス感染症発生と気象条件との関連の分析のために、正確な患者発生データの収集および気象データの入手を継続して行い、時系列解析を行う予定である。またロタウイルスワクチン導入後のロタウイルス株のジェノタイピング解析についても引き続き継続し、その効果を判定し、かつロタウイルス株の実相解明を行う。環境からのロタウイルス株の検出システムの確立については、更に検出精度を高める改良を加え、その検出条件設定を行う。できるだけ感度の高いシステムの開発を行い、気象条件、季節推移あるいは検体採取の地理条件等についても分析を加え、感染モード解明を試みていく予定である
すべて 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件)
The American Journal of Tropical Medicine and Hygiene
巻: Vol.93, No.3 ページ: 497-500
Journal of Biotechnology and Biosafety
巻: Vol.3, 4 ページ: 288-296