研究課題
ケニアにおけるロタウイルスワクチン導入に関連して、下痢患者由来のロタウイルス株の変異の実相解明を行うためにジェノタイピングを行い、さらにロタウイルス感染モードの解明を行うことが本研究の目的である。キアンブ県立病院でのロタウイルス感染症の発生の季節、気象条件との関連については患者発生データの精度を向上させ、2015年11月から検体収集を開始し、現在時系列解析中である。採取した2204下痢検体中、520検体がA群ロタウイルス陽性で、23.6%の検出率であった。ワクチン導入前の5歳以下の小児のロタウイルス陽性の下痢症患者は27.5%であり、ワクチン導入後13.8%に減少した。これは49.8%の検出率の減少を示している。G1ジェノタイプはワクチン導入前や導入後1年目では最も多いジェノタイプであった。ワクチン導入前では1%であったG3ジェノタイプは導入後では21%に増加し、G2ジェノタイプの割合は5% から導入後には17%と増加した。Pタイプは大きな変化は見られなかった。稀に見られたG8 とP[6]株の系統樹解析では、G8の遺伝子配列はアフリカ株が含まれる系統6に属し、ケニアのP[6] 株には少なくとも二つの群が存在することが判明した。空気検体からのウイルスの検出については、4種のMetal Mesh Device を用いて一定量の空気を採取し、ウイルス粒子の検出条件の検討を行った。特に土壌中に含まれるPCR阻害物質にはOneStep PCR Inhibitor Removal Kitを用い、Semi Nested, Nested PCRを用いて検出した。合計254検体が採取され、VP7は7検体からVP4は4検体から検出され、ともに検出できたのは3検体のみであった。さらに検出条件を検討し、空気中のウイルス粒子の検出システムの確立を図っていきたい。
2: おおむね順調に進展している
ロタウイルス感染症の発生のデータとその地域の気象条件との関連についての時系列解析については不成功だったが、患者データ欠損をできるだけ少なくするようなデータ採取法に改良し再び開始した。一定期間検体採取を行った後、時系列解析による分析を再度試みる予定である。下痢症の患者検体のロタウイルス株のジェノタイピングについては、極めて順調に進行しており、ワクチン導入前後のウイルス株の実相が明らかになり、かつワクチン株の効果についても判定が可能であることが示唆されている。また環境中からのウイルス粒子検出の試みも非常に順調に推移しているため上記の判定とした。
ロタウイルス感染症発生と季節性変化および気象条件との関連の分析のため、1年あまりかけて採取した正確な患者発生データと気象データから、時系列解析を行う予定である。一方、ロタウイルスワクチン導入後のロタウイルス株のジェノタイピング解析についても引き続き継続し、ワクチンの効果を判定し、かつロタウイルス株のジェノタイプの変異についても分析する。環境中からの空気検体採取を継続して行い、PCR反応の適正化を図り、空気中のウイルス粒子の検出系を確立し、更に検出精度を高める改良を行う。できるだけ感度の高い検出システムの開発を行い、気象条件、季節推移あるいは検体採取の地理条件等についても検討し、感染モード解明を試みていく予定である。
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Jpn J Infect Dis.
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