研究課題
これまでに感染者の半数以上が死亡したことが報告されている高病原性鳥インフルエンザH5N1ウイルスについて、その流行地域におけるウイルスの遺伝子型の変遷を調査し、ヒト間での流行のリスク評価を行うことを研究目的とする。H5N1ウイルス流行地域の中で、エジプトは特に2010年以降の感染者が集中しており、2014-2015年に全世界で報告された195名のH5N1感染者のうち、173名がエジプトより報告されている。本研究では、研究協力関係を構築しているエジプト国ダマンフール大学(獣医学部)と連携し、同国におけるH5N1分離株を中心に、感染患者および感染動物より分離されたウイルスの遺伝子型およびその病原性の解析を進めている。エジプト北部地域のハトから(2008-2009年)分離されたH5N1ウイルスの全ゲノムの遺伝子配列解読を行った結果、特有の遺伝子型を有することが明らかとなった。現在その成果を公表するための準備を進めている。
2: おおむね順調に進展している
エジプト国政府より派遣されたダマンフール大学獣医学部ウイルス学教室教授であるMadiha S. Ibrahim博士を平成27年8月より平成28年1月まで京都府立医科大学に招聘し、本研究課題について包括的な議論および研究方針の決定を行った。Ibrahim博士の来日に先んじて、同教室のAssistant LecturerであるEmad El-Din Mohamed Fouad El-Gendyを平成26年12月よりエジプト国の国費留学生として京都府立医科大学・感染病態学教室に招聘し、教員、大学院生とともにH5N1同国分離株(野鳥・家禽由来)の疫学・ウイルス学研究を行っている。これまでに、エジプト北部地域のハトから(2008-2009年)分離されたH5N1ウイルスの全ゲノムの遺伝子配列解読を行った結果、特有の遺伝子型を有することが明らかとなった。現在その成果をまとめた学術論文を投稿中である。
「概要」において記述した研究目的を達成するために、2009年以降のH5N1ウイルス分離株について、ウイルス全ゲノムの遺伝子配列解読を行う。特に、H5N1ウイルスゲノムの多様性(Quasi-species)にフォーカスし、研究期間(前)を通して経時的に得られた検体を対象として解析する。また、ウイルストロピズム(宿主域)に関与するヘマグルチニンならびに薬剤耐性に関与するノイラミニダーゼを中心に、ハイスループット・シーケンサーを用いて、PCR産物(アンプリコン)を、各検体につき数万~数十万クローンの深度で遺伝子解析(ディープ・シーケンス)する計画である。得られた遺伝子情報を基にして、研究分担者である開發を中心として、ペプチド核酸(PNA)を基盤とする新規プローブ(bisPNA-AZO)を有する検出デバイスを作製し、上記H5N1ウイルス検出の感度および特異性の評価を行う。これら得られた成果を取りまとめ、学会発表等を行うことを計画している。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件) 図書 (1件) 産業財産権 (1件)
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