研究課題/領域番号 |
15H05287
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
中屋 隆明 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80271633)
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研究分担者 |
開發 邦宏 大阪大学, 産業科学研究所, 特任准教授(常勤) (70419464)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | インフルエンザ / ウイルス / エジプト / H5N1 |
研究実績の概要 |
高病原性鳥インフルエンザH5N1ウイルス流行地域の中で、エジプトは特に2010年以降の感染者が集中しており、2015年以降に全世界で報告された155名のH5N1感染者のうち、146名がエジプトより報告されている。極めて高い致死率である高病原性鳥インフルエンザH5N1ウイルスに対して、その流行地域におけるウイルスの遺伝子型の変遷を調査し、ヒト間での流行のリスク評価を行うことを研究目的とする。 本研究では、研究協力関係を構築しているエジプト国ダマンフール大学(獣医学部)と連携し、同国におけるH5N1分離株を中心に、感染患者および感染動物より分離されたウイルスの遺伝子型およびその病原性の解析を進めている。エジプト北部地域のハトから(2008-2009年)分離されたH5N1ウイルスの全ゲノムの遺伝子配列解読を行った結果、特有の遺伝子型を有することが明らかとなった。平成28年度は上述した研究成果を2報の国際誌(peer reviewed)に発表した。 共同研究を行っているエジプト国ダマンフール大学のMadiha S. IBRAHIM教授(上記El-Gendy氏の指導教官)とは2016年8月に京都府立医科大学にて開催した国際ワークショップ“エジプト・アジア地域における人獣共通感染症”および2016年12月にダマンフール大学において開催した“エジプト-日本 第1回サイエンスセミナー”において相互訪問し、研究成果の発表と今後の研究内容の打合せを行った。 平成29年度は、継続して共同研究を進めていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
エジプト国のハトより分離されたH5N1鳥インフルエンザウイルス2株のゲノム解析を行い、さらにウイルス増殖に影響を与えるウイルスポリメラーゼの機能解析を行った。その結果、これまでのエジプトH5N1分離株には見られないアミノ酸配列を有することを明らかにした。さらに遺伝子組み換えウイルスを作製してウイルス増殖に影響を与えるウイルスポリメラーゼの機能解析を行った結果、複製機能を低下させるアミノ酸変異(PB1-V3D)を同定した。以上の成果を2報の国際誌に発表した。両論文の筆頭著者はダマンフール大学獣医学部のLecturerであるEmad El-Din Mohamed Fouad El-Gendy氏であり、招聘研究者として2016年12月まで2年間、京都府立医科大学にて研究を行った成果をまとめたものである。 また、研究分担者と共同でペプチド核酸(PNA)をプローブとし、抗インフルエンザNP抗体と併せてウイルス粒子を検出するPNAクロマトを作製した。同クロマトによるH5亜型鳥インフルエンザウイルスの検出に成功したが、H5N1を特異的に検出するものではないことから、最終年度はNA遺伝子も標的としたPNAプローブの開発に取り組んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究により、エジプト北部地域のハトから(2008-2009年)分離されたH5N1ウイルスの全ゲノムの遺伝子配列解読を行った結果、特有の遺伝子型を有することが明らかとなった。さらに遺伝子組み換えウイルスを作製してウイルス増殖に影響を与えるウイルスポリメラーゼの機能解析を行った結果、複製機能を低下させるアミノ酸変異(PB1-V3D)を同定した。 本年度は上記の成果を基盤として、遺伝子型と病原性・ウイルス増殖性についてさらに解析するとともに、新規診断デバイスの開発・評価試験を行う計画である。 また、エジプト国ダマンフール大学のMadiha S. IBRAHIM教授とは引き続き、相互訪問等を行うことにより、研究成果の取りまとめと更なる共同研究の協議を進めていく予定である。 さらに、研究分担者と協力して、ペプチド核酸を基盤とする検出デバイス(PNAクロマト)を改良し、上記H5N1ウイルス検出の感度および特異性の評価を行う。 これら得られた成果を取りまとめ、学会発表等を行うことを計画している。
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