研究課題/領域番号 |
15H05289
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
正木 尚彦 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 肝疾患医療情報室長 (40219316)
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研究分担者 |
市村 宏 金沢大学, 医学系, 教授 (10264756)
田中 靖人 名古屋市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (90336694)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ウイルス肝炎 / B型慢性肝炎 / C型慢性肝炎 / 核酸アナログ製剤 / DAAs / 薬剤耐性ウイルス |
研究実績の概要 |
本研究では、正木研究代表者はネパール、市村研究分担者はベトナム、田中研究分担者はタイ、エジプトを担当する。平成27年度は各研究者のカウンターパート国における研究協力者を中心として、B型・C型肝炎ウイルスキャリアに関する疫学調査を進めるとともに、特に、抗ウイルス療法の導入状況と治療効果に関する前向き・後ろ向き研究を開始した。正木研究代表者は平成27年12月にカトマンズに赴き、ネパール肝臓学会のSudhamshu KC会長と面談し、ネパールにおける肝炎対策の現状について意見交換を行った。平成27年4月の大地震の影響で倫理委員会による承認が遅延したため、年度内の血清採取は捗らなかったが新年度に入り精力的に収集を進めている。今年度は一般医療者も含めたアンケート調査を実施する予定である。市村研究分担者はベトナム・ハイフォン医科薬科大学病院におけるB型慢性肝炎患者170名の追跡調査を継続しており、治療失敗例での薬剤耐性変異の出現状況、および治療対策について検討した。田中研究分担者はエジプトのカウンターパートを招聘しC型肝炎治療についての情報収集を行い、90%以上を占めるゲノタイプ4に対する各種DAAs(Direct Acting Antivirals)治療の追跡調査を開始した。タイについてはPEG-IFN治療を受けたHBe抗原陽性B型慢性肝炎患者のシリーズ血清におけるHBcrAg量がcccDNAに相関し、治療効果予測マーカーとしても有用であることを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
B型、C型慢性肝炎患者に対する抗ウイルス療法の導入状況については、ネパール、ベトナム、エジプト、タイのそれぞれについて、研究代表者、分担者がフィールドを有していることから、今後の研究の進展について大きな問題はないと考えている。尚、研究代表者が担当しているネパール・カトマンズについては、平成27年4月に予期せぬ天災(大地震)が発生し、ただでさえ貧困にあえぐ住民への追い打ちとなったことから、本研究事業が被った影響は大きい。しかし、同年12月に現地を視察した印象では、病院や医療従事者への被害は比較的小さく、B型・C型肝疾患に対する新規治療薬剤に対する患者の関心もきわめて高かったことから、臨床研究への協力も期待出来るものと考えている。市村研究分担者はベトナムに確立したB型慢性肝炎170名の患者コホートを対象に順調に研究を進めているが、さらに、ケニアにおいても新規ウイルス療法の導入状況および保健衛生行政に関する実態調査を開始している。田中研究分担者はエジプトで2015年4月から開始された3種類のDAAs治療(PEG-IFN+RBV+SOF 12週、SOF+SMV 12週、および肝移植患者に対するSOF+RBV 24週)を解析する体制を構築し得ている。かつ、タイにおける初年度の研究成果についてはすでに論文発表を行っている(Liver International)。
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今後の研究の推進方策 |
ネパール(正木研究代表者)については、一般医療者を対象とした肝炎診療に関するアンケート調査を今年度実施する。現地における実務担当として、当初の計画ではカウンターパートに依頼する予定であったが、加えてネパール肝臓学会の協力も得ることとする。 ベトナムとの共同研究(市村研究分担者)については、1)ハイフォン医科薬科大学病院で慢性B型肝炎患者における抗ウイルス療法の導入状況と治療効果ならびに薬剤耐性ウイルスの出現状況の追跡調査を継続して行う。2)ベトナム北部の異なるヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染リスク群におけるB型肝炎ウイルスとC型肝炎ウイルスの感染ならびにHIVとの重複感染について検討を行い、2007-2008, 2012年の結果と比較解析する。3)同時に、ケニアにおける新規抗ウイルス療法の導入状況および保健衛生行政に関する実態調査を進める。 エジプトとの共同研究(田中研究分担者)については、1)2015年4月より開始されたDAAs治療の治療成績及び有害事象について検討する。HCV-RNA定量はコストが高いので、HCVコア抗原の有用性を検討する。2)オカルトHBVの特徴を明らかにする。また、タイとの共同研究については、1)HBe抗体陽性慢性肝炎に対するPEG-IFN実施例のシリーズ検体を用いて、HBcrAg及び治療効果に関連するウイルス変異を探索。2)B型肝炎関連の肝癌治療後の予後(再発)に関連する因子を探索:HBV関連マーカー(HBsAg, HBcrAg)や線維化マーカー(M2BPGi)、AFPなどを測定する。
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