研究課題/領域番号 |
15H05289
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研究機関 | 国立研究開発法人国立国際医療研究センター |
研究代表者 |
正木 尚彦 国立研究開発法人国立国際医療研究センター, その他部局等, 臨床検査室医長 (40219316)
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研究分担者 |
市村 宏 金沢大学, 医学系, 教授 (10264756)
田中 靖人 名古屋市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (90336694)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 慢性B型肝炎 / 核酸アナログ製剤 / 薬剤耐性変異ウイルス / 慢性C型肝炎 / DAAs |
研究実績の概要 |
B型慢性肝疾患の治療実態を明らかにするために、下記の5カ国における実地調査を行った。1)ネパール(正木班員):先行研究(2007年~12年)で構築したB型肝疾患データベース(65例、うち核酸アナログ製剤[NUCs]投与44例)のその後につき、血清採取・臨床情報収集を実施。NUCs投与例17例(40%;LMV+ADF 2例/TDF 15例、うち1例はRTAのためETVへ切替)で平均4年3ヶ月後の検体採取が可能であった。ゲノタイプはAa 2例/C 1例/D 10例(60%)/不明4例で、HBs抗原量の消失1例/漸減5例/激減3例を認め、ゲノタイプD、TDF投与例で奏効していた。 2)エジプト(田中班員):HBsAg陰性HBc抗体陽性(オカルトHBV)の血液がん患者54名を対象にウイルス学的特徴を検討し、23名 (42.6%)でHBV-DNAを検出し、S領域に特異的な変異(P120T、S143L)を同定しえた。3)タイ(田中班員):HBe抗原陰性の121名を対象として、PEG-IFN単独療法とPEG-IFN+ETV併用療法のランダム化試験が実施された。全体のウイルス学的著効は29%、HBsAg消失は9%に認められた。ベースラインのcccDNA量はHBV-DNA 及びHBcrAgと相関していた。ウイルス学的著効の予測因子として、ベースラインHBsAg低値 (<3.4 log10 IU/mL)、治療12週でのHBsAgあるいはHBcrAg低下 (≦0.5 log10)が関与していた。 4)ベトナム(市村班員):ハイフォン医科薬科大学病院で慢性B型肝炎患者170名の追跡調査を継続。5)ケニア(市村班員):ヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染者のHBs抗原陽性率は3.7%(n=380)、HBV pol領域に薬剤耐性遺伝子変異(L180M, M204V)を有する患者が2例見つかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)ネパール:計画より遅れた。2015年4月に発生したカトマンズ大地震による首都機能の脆弱化、近年持続しているマオイスト活動に起因するインド・ネパールの非公式国境封鎖に伴うガソリン供給不足、ライフライン不安定化のため、カトマンズ郊外からの通院困難、生活困窮化によるNUCs自己中断、追跡不能者数が増加していた。 2)エジプト、タイ、ベトナム、ケニアについてはほぼ当初の計画どおり。 3)2016年度の研究進捗状況については、ネパールのカウンターパートをまじえた班会議(2017年6月1日開催)において研究成果発表、情報交換し確認ずみである。
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今後の研究の推進方策 |
1)ネパール(正木班員):2017年度は登録済みB型肝疾患患者の追跡調査、長期予後調査を継続すると同時に、新規登録患者数の増加を目指す。また、肝炎ウイルスマーカーの測定状況、医療連携の実態を明らかにすることを目的として、肝臓病・消化器病を専門としない医療者を対象としたアンケート調査票を作成した。カトマンズ周辺の医療者への調査票の配布・回収の推進をカウンターパートに依頼する。 2)エジプト・タイ(田中班員):エジプトとの共同研究では2017年度は引き続き、共同研究者と情報交換を行い、DAAs治療成績をまとめる。HCVコア抗原の有用性も検討する。 タイとの共同研究では2017年度は引き続き、共同研究者と情報交換を行い、追加解析を実施することで論文化を目指す。 3)ベトナム(市村班員):ハノイ国立熱帯病病院(NHTD)における慢性C型肝炎の治療成績、並びに慢性C型肝炎のケア・治療プロセスにおける課題を明らかにする。NHTDにおいて、C型肝炎の治療を既に開始/終了した慢性C型肝炎患者2,500名、及び新たに治療を始める慢性C型肝炎患者1,200名を対象とし、C型肝炎治療効率(研究対象者におけるSVR12 /SVR24の率)および安全性(C型肝炎治療による死亡率、SAE率)を評価する。尚、本研究計画は両施設(NHTD、金沢大学)の倫理委員会で既に承認されている。
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