研究課題/領域番号 |
15H05290
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
藤田 眞幸 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00211524)
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研究分担者 |
中嶋 克行 群馬大学, 保健学研究科, その他 (10444051)
大澤 資樹 東海大学, 医学部, 教授 (90213686)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ポックリ病 / Lai-Tai / 突然死 / 冠動脈攣縮 / 東南アジア / 不整脈 / Brugada症候群 / 脂質代謝 |
研究実績の概要 |
ポックリ病症候群 (Pokkuri Death Syndrome: PDS) は、健康な青年が、夜間就寝中に突然、短時間で死亡する原因不明の疾患である。冠動脈疾患による突然死例 (Coronary Artery Disease: CAD) にみられる動脈硬化所見はほとんどなく、心肥大や明らかな器質的疾患もみられない。PDSは東南アジア地域で多発することが知られており、タイでは、Lai-Tai (L-T) として知られている。本研究は、その原因を、実態調査を通して、地域間比較をすることにより、明らかにするものである。 これまで、日本の事例において、Brugada 症候群の原因遺伝子の一つであるSCN5A遺伝子の変異をいくつかみとめているが、今回は、タイのL-T事例につき、まずは、日本のPDS例で多くみられたSCN5Aの変異部位について遺伝子解析を行った。その結果、exon 12において、心房細動と関連のある変異(H558R)が、L-T群(48例)で27.1%、CAD群(44例)で36.4%、Control(C)群(43例)で23.3%にみられた。日本の場合と比較してタイの事例で多い傾向にあるが、C群でも多く、現時点では明確な意義づけはできていない。このほか、exon 28において、これまで未報告の変異をタイの事例でも見出しているも、有意な結果は得られていない。 タイ以外の国の実態調査としては、ミャンマーのヤンゴン第1医科大学と共同研究体制を構築した。このほか、ポックリ病の原因物質のひとつと考えられる、レムナントリポ蛋白(RLP)の生化学的性状の解析を進めることにより、脂質代謝の中心的役割を果たす酵素でRLPの生成に関与するリポ蛋白リパーゼ(LPL)が、循環血液中でレムナントリポ蛋白(RLP)と結合した代謝中間体、「RLP-LPL複合体」として存在していることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
タイ国の事例については、新年度、予算使用可能となりしだい、一気にシークエンス解析を行う準備ができており、本年度は大きく進展していく予定である。 一方、ミャンマーにおける実態調査については、先方との交渉等に時間を要したが、今後は、円滑に進めていくことができるものと思われる。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、タイの事例についての実態調査と資料収集を継続するとともに、遺伝子解析を行う。気温の高いタイの事例の中には、高体温や脱水の影響を受けているものが存在する可能性があり、事例の経過の詳しい検討と、新たな診断マーカーの検討を行いたい。 ミャンマーのほか、タイの近隣諸国についても、共同研究体制を構築し、まずは、統計的な調査を進めていく。東南アジア諸国におていは、解剖体制が整っていない国もあり、そのような点についても情報を集めていく。 脂質についても、新しいマーカーの検討を同時に進めて行く予定である。
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