研究課題/領域番号 |
15H05291
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
安田 宜成 名古屋大学, 医学系研究科, 寄附講座准教授 (60432259)
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研究分担者 |
丸山 彰一 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (10362253)
堀尾 勝 大阪大学, 医学系研究科, 准教授 (20273633)
石井 秀樹 名古屋大学, 医学部附属病院, 講師 (90456674)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | GFR推算式 / 腎アウトカム指標 / 血清クレアチニン値 / 血清シスタチンC値 / 尿蛋白 / GFR低下速度 |
研究実績の概要 |
国際研究共同体制を構築し、欧州腎臓学会、日本腎臓学会、米国腎臓学会、第5回CKD Frontier会議にあわせて、会議を開催し討議した。 アジア人種における腎機能評価法につき韓国人の慢性腎臓病患者166名においてイヌリンクリアランスで腎機能を評価した結果から、血清クレアチニンに基づく糸球体濾過量(GFR)推算式では、国際的に汎用されるMDRD式、CKD-EPI式よりも、日本人のGFR推算式が正確に腎機能を評価できることを報告した。韓国人の筋肉量は台湾人よりも少なく、年代、性別ごとに比較すると日本人の筋肉量に近似していた。 30%GFR低下のアウトカムにつき、研究方法をJohns Hopkins大学のCoresh教授、Matsushita先生と協議し、既存の沖縄県のコホート研究データによる解析を計画した。さらに本邦で行われたCKD-JAC研究やORIENT研究の解析が進行しており、比較検討が可能である。 国内の多施設共同研究において1,091例のIgA腎症患者の腎機能悪化アウトカムと尿アウトカムを解析した。10年以上の観察期間においても、透析治療を要する末期腎不全は57例(5.2%)にすぎない。一方で血清クレアチニン値の2倍化は93例(8.5%)、同1.5倍化は124例(12.4%)と多く、早期アウトカム指標となるが、緩徐進行性のIgA腎症では少なくとも数年以上の観察期間が必要であった。国際的には30%GFR低下が2から3年で観察されることを新たな腎アウトカムとしている。血清クレアチニン値の1.5倍化はほぼ30%GFR低下に近似するが、その異同を詳細に検討する必要がある。またIgA腎症のような緩徐進行性腎疾患では数年と長期での30%GFR低下の有効性を検証する必要がある。 また免疫抑制療法や口蓋扁桃摘出術により、尿異常が寛解する症例が多く、寛解後は腎機能が悪化しないことが明らかとなった。さらに尿異所見に基づく腎アウトカム指標について検討を進める。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
GFR推算式のアウトカム指標解析は体制の整備に時間を要した。IgA腎症について共同研究施設の倫理委員会の承認を待っている。
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今後の研究の推進方策 |
アジア系人種に適したGFR推算式を作成し、それを用いた新たな腎疾患アウトカム指標を確立する。IgA腎症では血清クレアチニン値の1.5倍化が腎アウトカム指標として使用されることが多いが、国際的には30%GFR低下が新たな腎アウトカム指標として提唱されており、その有効性を検討する。尿アウトカム指標はことにIgA腎症患者では重要であり、尿異常が寛解すれば腎機能は低下しないため、治療効果判定には尿アウトカム指標が不可欠である。国際共同研究においてこれらの成果がアジア系人種に広く適応可能か検討を進める。
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