研究課題
IgA腎症はわが国に高頻度に認める慢性糸球体腎炎であるが,発症に人種差を認めアジア人に多く黒人では稀である。患者血中に糖鎖異常IgA1が増加するが,糖鎖の正確な構造は明らかでなく,糖鎖異常IgA1のバイオマーカー利用に大きな障害となっている。本研究は,①多人種間で正常及びIgA腎症患者のIgA1糖鎖構造を明らか(正常と異常の同定)とする,②患者に増加する異常糖鎖構造の簡便な検出システムを構築する,③検出システムの有用性を国際間で検証し,臨床・病理像との関連を明らかとし,従来の方法を超える非侵襲的新規診断法として確立することを目的としている。本年度は,高分解能質量分析計(Orbitrap Fusion ETD, Thermo Fisher Scientific)を用いて,ハイスループットに糖鎖異常部位を検出するプロトコールを作成した。また,白人,黒人,ヒスパニック,アジア人,日本人の健常者血清それぞれ10名,計50名からIgAを精製し現在解析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
糖鎖異常部位を検出するETD tandem MSを用いた解析プロトコールが完成し,IgAの分離も健常者,患者共にすすめている。
健常者IgA1のO結合型糖鎖の人種間比較を早期に行い,正常糖鎖構造をシアル酸を含めて決定する予定である。並行して,日本人IgA腎症患者の血清IgA1糖鎖解析を行い,患者特異的異常糖鎖構造の同定を行う。既にアメリカ,イタリアの共同研究者からは同意を得ているが,患者の選定に関しては,日本人患者の結果により患者選定を行うこととなった。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件、 招待講演 1件) 図書 (1件)
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