本研究課題では、申請者がこれまで行ってきた研究(TECS:TOPPERS Embedded Component System)を出発点として、スクリプト言語(mruby)の利点を取り入れることで、動作検証プロタイプのための組込みソフトウェア開発基盤を構築することを目的としている。平成30年度までに、通信ミドルウェアのTCP/IPプロトコルスタックであるTINET(通信ミドルウェア)をTECSコンポーネントで部品化が完了している。 平成30年度は、リアルタイムOS上で動作する通信ミドルウェアを、mrubyプログラムから利用できるようにするために、mrubyのライブラリとして通信ミドルウェアを提供できる仕組みを引き続き研究開発を行った。さらに、メモリの管理を行うためのメモリアロケータをコンポーネントとして扱える仕組みを提案した。提案メモリアロケータを利用することで、IoTプログラム間で干渉が起きず、優先すべき処理を正しく行えるようになる。このメモリアロケータを利用することでmrubyの仮想マシンのメモリアロケータとしても利用でき、複数のVMを安全に利用できるようになる。その他、開発環境および、コンポーネントベース開発おけるデバッグ環境構築を目指した、コンポーネントの内部情報を取得する機構の研究開発を行った。既存の環境では、プログラムのデバッグを行うには、コンポーネントの構成を熟知している必要があり、初心者が利用するには難易度が高い。そこで、提案機構を利用することで、必要な情報を簡単に入手できるようになる。この情報を利用することで、mrubyを含む提案動作検証プロタイプのデバッグで必要な情報を取得できるようになる。
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