研究課題/領域番号 |
15H05310
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
平井 真洋 自治医科大学, 医学部, 准教授 (60422375)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 行為知覚 / 社会的認知 / 定型発達 / 非定型発達 |
研究実績の概要 |
他者への選好,他者行為理解,他者の動作による学習など,その発達過程を追うことは社会的認知の発達過程を解明する上で極めて重要である.本研究計画では,そのような社会的認知を構成する基盤となる,他者選好の発達過程,他者の動きに埋め込まれた社会的情報によりどのように学習するかについて明らかにすることを目的とする.本年度は,提案した研究課題を実施するための準備段階として,研究に用いる動画刺激をモーションキャプチャーシステムにより作成し,乳児研究を実施するためのリクルート体制の確立,研究補助員の募集などの研究体制の確立を目指した.さらにこれらの目処がついた段階から,予備調査を実施し,本調査を実施するための準備を進めた.本年度は二つの研究課題の開始と予備検討を射程に研究を進めた.(研究課題1)光点運動のみから他者の行為を知覚可能なバイオロジカルモーションを用い,その運動カテゴリを操作することにより,動きカテゴリへの選好に対する発達過程を追跡した. (研究課題2)他者動作が社会的学習に果たす役割を検討した.研究課題1では,モーションキャプチャー装置により刺激を複数作成し,アイトラッカー課題として実装した.アイトラッカーの適用が難しい低月齢の乳児を対象とした調査では,可搬性のビデオ記録装置を構築し,自治医大附属病院での調査を開始した.研究課題2では,身体動作にどのような社会的情報が埋め込まれているかを明らかにするため,アイトラッカーを用いた学習課題を用い,その運動成分について検討することを目指した.モーションキャプチャー装置を用い,動作を記録した上で,アイトラッカー課題として実装し,予備検討を開始した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
提案した研究計画を実施するための刺激作成,研究に必要な装置の構築,乳幼児のリクルート体制,研究補助員の募集などの研究体制の確立を目指した.さらにこれらの目処がついた段階から,予備調査を実施し,本調査を実施するための準備を進めた.提案した研究計画に基づき,本年度は2つの研究課題をそれぞれ同時並行的に進めている.研究課題1では,光点運動のみから他者の動きを知覚可能なバイオロジカルモーションを用い,複数の異なる運動カテゴリの動きの刺激を用い,どちらに選好を示すかをアイトラッカーもしくはビデオ記録を用いた眼球運動計測により明らかにしている.生後1~12ヶ月児を対象としている.その結果,一部の月齢の乳児において,特定の動きへの選好がみられることが明らかになった.研究課題2では,他者の動きに埋め込まれた働きかけの動きの役割を明らかにすることを試みている.現時点においては,予備的な結果であるが,特定の動作と統制した動作が社会的学習を促進するかどうかについて検討し,特定の動作パターンが学習を促進する働きがあることを見出しつつある.次年度以降にこれらの確定したパラダイムを用いて研究を進める予定である.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は,研究体制の確立を主眼に研究を進め,刺激の作成とパラダイムの確定,予備調査を進めるに至った.今後はこれらの実験パラダイムを用いて,月齢の変化による発達変化を明らかにする予定である.研究課題1では,運動カテゴリを複数用意し,動作カテゴリのバリエーションにより,選好がどのように変化するかについて明らかにする.この行動結果に基づき,その神経基盤を明らかにすることを試みる.研究課題2では,社会的学習を促進させる特定の動作のどのような要因が社会的学習を促進させるのか,月齢により効果がどのように異なるのかを明らかにする.更にその神経基盤についても明らかにするよう,バイオマーカーの確立に向けての予備的検討を進める.これらに基づき,身体運動に埋め込まれた社会情報処理機構の発達メカニズムについて解明する予定である.
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