大気エアロゾルの光化学的エイジング過程の解明

2017 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 15H05328
• 研究機関: 国立研究開発法人国立環境研究所
• 研究代表者: 江波 進一 国立研究開発法人国立環境研究所, 環境計測研究センター, 主任研究員 (00589385)
• 研究期間 (年度): 2015-04-01 – 2019-03-31
• キーワード: エアロゾル / ラジカル / 界面 / 地球温暖化 / 健康影響 / PM2.5 / 反応 / イオン

研究実績の概要

大気エアロゾルは大気中でオゾンやヒドロキシルラジカルなどの酸化を受けることで常に変質している。この変質プロセスは不均一な反応であり、その反応機構の解明は地球の気候変動予測と健康影響評価の両面において極めて重要である。特にエアロゾルの気液界面に生成するクリーギー中間体(カルボニルオキシドの一種)が関与する反応は重要であると予想されてきたが、その反応機構はほとんどわかっていなかった。
H29年度は気液界面に生成するクリーギー中間体の反応機構を系統的に調べることに成功し、目標を大きく上回る成果を得ることができた。本成果はEnami et al. J. Phys. Chem. Lett., 2017, 8, 3888-3894. Enami and Colussi, J. Phys. Chem. A, 2017, 121, 5175-5182. Enami and Colussi, Phys. Chem. Chem. Phys., 2017, 19, 17044-17051. として論文発表した。また本成果を評価されて“In-situ mass spectrometric monitoring of reactions at the gas-liquid interface” Pittcon 2018, Orlando (USA), 2018. FEB 26 - MAR 1, 2018など、国際学会での招待講演を含む１１件の口頭発表を行った。このように本研究は大気エアロゾルの気液界面で起こるクリーギー中間体の反応機構の解明において世界をリードしている。今後もクリーギー中間体と安息香酸の気液界面反応メカニズムの解明などを目指して研究を進めていく。

現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

クリーギー中間体の気液界面反応メカニズムの解明など、当初想定していなかった重要な結果が得られたため。これまでのところ、大気エアロゾルのOHラジカル酸化反応やオゾン酸化反応に関する成果が計画以上に出ており、H30年度には更なる成果が期待できる。

今後の研究の推進方策

今後は大気エアロゾルの気液界面で起こるクリーギー中間体と安息香酸の反応機構などを調べていく。安息香酸は北京などの大気汚染が深刻な地域のPM2.5に多く含まれており、PM2.5の成長・変質過程にクリーギー中間体＋安息香酸の気液界面反応が重要な役割を果たしている可能性が高い。この反応機構の解明を目指して研究を進めていく。

研究成果

• [雑誌論文] Efficient scavenging of Criegee intermediates on water by surface-active cis-pinonic acid (2017)
  • 著者名/発表者名: Enami Shinichi、Colussi A. J.
  • 雑誌名: Physical Chemistry Chemical Physics 巻: 19 ページ: 17044～17051
  • DOI: 10.1039/c7cp03869k
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Reactions of Criegee Intermediates with Alcohols at Air-Aqueous Interfaces (2017)
  • 著者名/発表者名: Enami Shinichi、Colussi A. J.
  • 雑誌名: The Journal of Physical Chemistry A 巻: 121 ページ: 5175～5182
  • DOI: http://dx.doi.org/10.1021/acs.jpca.7b04272
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Criegee Intermediates React with Levoglucosan on Water (2017)
  • 著者名/発表者名: Enami Shinichi、Hoffmann Michael R.、Colussi A. J.
  • 雑誌名: The Journal of Physical Chemistry Letters 巻: 8 ページ: 3888～3894
  • DOI: http://dx.doi.org/10.1021/acs.jpclett.7b01665
  • 査読あり / 国際共著
• [雑誌論文] Aerosol Health Effects from Molecular to Global Scales (2017)
  • 著者名/発表者名: Shiraiwa et al.
  • 雑誌名: Environmental Science & Technology 巻: 51 ページ: 13545～13567
  • DOI: http://dx.doi.org/10.1021/acs.est.7b04417
  • 査読あり / 国際共著
• [学会発表] In-situ mass spectrometric monitoring of reactions at the gas-liquid interface (2018)
  • 著者名/発表者名: Enami Shinichi
  • 学会等名: Pittcon 2018
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] Mass spectrometric measurements of fast radical reactions at the air-water interface (2018)
  • 著者名/発表者名: Enami Shinichi
  • 学会等名: 日本化学会第98春季年会アジア国際シンポジウム
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] Interfacial reactions of Criegee intermediates with water, acids, alcohols and sugars (2017)
  • 著者名/発表者名: Enami Shinichi
  • 学会等名: 3rd International Workshop on Heterogeneous Kinetics Related to Atmospheric Aerosols
  • 国際学会 / 招待講演
• [学会発表] Reactions of Criegee intermediates at gas-aqueous interfaces (2017)
  • 著者名/発表者名: Enami Shinichi
  • 学会等名: 34th International Symposium on Free Radicals
  • 国際学会
• [学会発表] Reactions of Criegee intermediates at the gas-liquid interface (2017)
  • 著者名/発表者名: Enami Shinichi
  • 学会等名: 254th ACS National Meeting
  • 国際学会
• [学会発表] Experimental study on the reactions of Criegee intermediates at the gas-liquid interface (2017)
  • 著者名/発表者名: Enami Shinichi
  • 学会等名: 33rd Symposium on Chemical Kinetics and Dynamics
  • 国際学会
• [学会発表] Heterogeneous reactions of gaseous ozone with aqueous sesquiterpenes: The roles of Criegee intermediates (2017)
  • 著者名/発表者名: Enami Shinichi、Colussi A. J.
  • 学会等名: JpGU-AGU joint meeting 2017
  • 国際学会
• [学会発表] クリーギー中間体は大気エアロゾルの成長にどのように関与しているのか？ (2017)
  • 著者名/発表者名: 江波進一
  • 学会等名: 第23回大気化学討論会