研究課題
本研究の目的は、代表者が開発下メタン生成補酵素F430の超高感度定量分析法を海洋表層水および海底堆積物試料に適用することで、海洋環境におけるメタンの動態を明らかにすることである。当該年度の研究計画は1)従来分析に用いていた高速液体クロマトグラフ/ トリプル四重極質量分析計の高感度化を行うこと、2)メタン菌の培養実験を行い、F430濃度とバイオマスおよびメタン生成速度との関係性を明らかにすることであった。高速液体クロマトグラフ/トリプル四重極質量分析計の高感度化においては、従来の高速液体クロマトグラフに対し、ナノフロー液体クロマトグラフを用いることで高感度化を目指した。しかしながら、微少流量下かつアシストガスが無い状態でのイオン化が不安定であることが原因で、分離および検出は可能であるものの、定量分析の再現性が得られなかった。一定期間挑戦しても問題が改善しなかったため、方針を変更し、マイクロ流量での分析でルーチン化を行った。メタン菌の培養実験に関しては、方針を変更し、より緊急性の高い補酵素F430の分解実験を行った。それにより補酵素F430の現場環境における半減期が極めて短く、原位置のメタン生成ポテンシャルを定量するバイオマーカー分子になり得ることを実験的に示した。また、統合国際深海掘削計画 (IODP)の第370航海に参加し、室戸沖の掘削調査および試料採取を行った。また、南海トラフおよび外洋の海水試料から補酵素F430を抽出し、検出に成功した。今後更なる分析を進め海洋環境におけるメタン菌の分布と活性を明らかにする。当該年度中には国際誌による発表1件、国際学会による発表3件、国内発表による発表1件を行い、好評を得た。
2: おおむね順調に進展している
高速液体クロマトグラフ/質量分析計の高感度化に課題は残るものの、次年度以降行う環境試料の分析の基盤は整い、順調に進んでいると判断できる。ルーチン化したマイクロフロー高速液体クロマトグラフ/質量分析計での分析を進めつつ、ナノフローでの分析法開発を今後も続け、マイクロフローで検出できなかったものだけをナノフロ-での分析法確立後に再度分析する方針に変更することによって、当初の計画を遅延することなく遂行可能である。
次年度以降は海底堆積物や海水試料などの環境試料中の補酵素F430の解析を進め、並行してナノフロー高速液体クロマトグラフ/トリプル四重極質量分析計での分析法開発を進める。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (6件) 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件)
Geochemical Journal
巻: 50 ページ: 453
10.2343/geochemj.2.0410