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2015 年度 実績報告書

放射線誘発二重鎖切断損傷修復に関与する新規疾患責任遺伝子の分子機能解析

研究課題

研究課題/領域番号 15H05333
研究機関長崎大学

研究代表者

中沢 由華  長崎大学, 原爆後障害医療研究所, 助教 (00533902)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2017-03-31
キーワード修復 / DNA修復 / NHEJ / 遺伝性疾患
研究実績の概要

研究代表者らは、DNA修復機構の異常により小頭症や発育異常を示す先天性疾患が疑われる症例について、DNA修復活性評価や次世代ゲノム解析を活用して、疾患責任遺伝子変異の同定を実施した。この結果、DNA二重鎖切断 (DSB)修復機構の1つである非相同末端結合 (NHEJ)に関わるXRCC4遺伝子上に新規疾患責任遺伝子変異を同定した。NHEJの異常は、DSB修復機能の欠損による放射線感受性のほか、V(D)J組換え/クラススイッチの異常により、LIG4症候群に見られるような免疫不全を引き起こすと考えられていた。しかし、XRCC4症候群では、患者由来細胞は放射線感受性を示すものの、患者の免疫系異常は確認されていない。この病態の相違を解明するため、NHEJ関連因子のリコンビナント蛋白質を精製しin vitroでのライゲーション活性の評価や、本症例で見つかった変異型XRCC4存在下でのV(D)J組換え頻度と連結部位の配列形状の調査など、生化学的/ 細胞生物学的解析を進めた。また、遺伝子の機能異常と病態との関係解明のための情報蓄積にむけて、本疾患と類似の症例を国内外から収集し、ゲノム/細胞レベルでのスクリーニングを行った。これら新たに収集した症例に関して、疾患責任遺伝子変異の探索を実施したところ、ある症例において機能未知の遺伝子Y上に疾患原因変異候補を同定した。本遺伝子とXRCC4との関係を明らかにするため、本遺伝子の機能解析及びXRCC4との関連調査を行った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

小頭症を示し、DNA修復機構のうち主に紫外線によるDNA損傷を修復することが知られるヌクレオチド除去修復機構 (NER)の先天的な欠損により発症するコケイン症候群が疑われた症例の疾患責任遺伝子変異を調査したところ、放射線などによるDSBを修復することで知られるNHEJに関与するXRCC4遺伝子上に疾患原因変異を同定した。XRCC4症候群の病態解明のため、in vitro実験系でのライゲーション活性調査や、変異型XRCC4存在下でのV(D)J組換え調査等を行ったが、XRCC4症候群患者で免疫系の異常が見られない原因は明らかになっておらず、現在も解析を進めている。遺伝子変異と病態の関係を明らかにするため、XRCC4症候群と類似の症例を国内外より収集し、DNA修復活性評価と欠損した修復活性の回復を指標としたウイルス相補性試験、及び次世代ゲノム解析を併用することで、疾患責任遺伝子変異の同定を進めた。その結果、ある症例において機能未知の遺伝子Y上に疾患原因変異を同定した。XRCC4遺伝子と本機能未知遺伝子との関係を明らかにするため、機能解析を進めたところ、興味深い結果を得たため、引き続き解析を継続している。また、他の類似症例解析からも、疾患原因と考えられる遺伝子異常がいくつか同定されており、NHEJとの関連を調査する予定であり、本研究は順調に進展していると考えられる。

今後の研究の推進方策

研究代表者らが保有するXRCC4症候群患者由来細胞は、DSB修復能を完全に欠損しているにも関わらず、本患者に免疫系の異常は見られていない。また、本患者で同定された変異型XRCC4が免疫系反応 (V(D)J組換え反応など)に異常をもたらす確証は得られていない。このNHEJの先天的な欠損と免疫系の異常が見られない病態との関係をより直接的に検討するため、モデル動物での病態解析を取り入れることとした。また、XRCC4と機能未知の遺伝子Yとの関係も明らかにする。DSBが生じた際に関わるDNA修復/DNA損傷応答機構は、様々なメカニズムが入り組んでいることから非常に複雑であり、また多くの因子が関与するため、XRCC4と機能未知の遺伝子Yとが同一の経路上あるいは直接機能的な関連をもっているのかを明らかにする。継続して行っている類似症例の疾患責任遺伝子変異の探索で検出されてきた疾患原因と考えられる変異候補について、その真偽の検証とNHEJ活性あるいはXRCC4機能への影響を調査するとともに、引き続き症例収集と疾患原因変異同定を進める。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] A ten-year follow up of a child with mild case of xeroderma pigmentosum complementation group D diagnosed by whole genome sequencing.2016

    • 著者名/発表者名
      Ono R, Masaki T, Mayca Pozo F, Nakazawa Y, Swagemakers SM, Nakano E, Sakai W, Takeuchi S, Kanda F, Ogi T, van der Spek PJ, Sugasawa K, Nishigori C
    • 雑誌名

      Photodermatol Photoimmunol Photomed

      巻: 32 ページ: 174-180

    • DOI

      10.1111/phpp.12240.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Novel compound heterozygous DNA ligase IV mutations in an adolescent with a slowly- progressing radiosensitive-severe combined immunodeficiency.2015

    • 著者名/発表者名
      Tamura S, Higuchi K, Tamaki M, Inoue C, Awazawa R, Mitsuki N, Nakazawa Y, Mishima H, Takahashi K, Kondo O, Imai K, Morio T, Ohara O, Ogi T, Furukawa F, Inoue M, Yoshiura K, Kanazawa N.
    • 雑誌名

      Journal of Clinical Immunology

      巻: 160 ページ: 255-260

    • DOI

      0.1016/j.clim.2015.07.004.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] XRCC4 deficiency in human subjects causes a marked neurological phenotype but no overt immunodeficiency.2015

    • 著者名/発表者名
      Guo C, Nakazawa Y, Woodbine L, Bjorkman A, Shimada M, Fawcett H, Jia N, Ohyama K, Li TS, Nagayama Y, Mitsutake N, Pan-Hammarstrom Q, Gennery AR, Lehmann AR, Jeggo PA, Ogi T.
    • 雑誌名

      Journal of Allergy and Clinical Immunology

      巻: 136 ページ: 1007-1017

    • DOI

      10.1016/j.jaci.2015.06.007.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] A Screening of Cockayne syndrome like patients identified a new class of disease associated with mutations in the XRCC4 gene.2016

    • 著者名/発表者名
      中沢由華
    • 学会等名
      10th Quinquennial Conference on Responses to DNA damage: from molecule to disease
    • 発表場所
      Egmond aan Zee(オランダ)
    • 年月日
      2016-04-17 – 2016-04-22
    • 国際学会
  • [学会発表] ゲノム不安定性を示す遺伝性疾患の症例収集と病態解析研究.2015

    • 著者名/発表者名
      荻 朋男、中沢由華、唐田清伸、郭 朝万、岡 泰由、賈 楠、嶋田繭子、宮﨑仁美、千住千佳子.
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド(兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2015-12-03 – 2015-12-03
  • [学会発表] ゲノム不安定性を示す難治性遺伝性疾患群の症例収集とゲノム・分子機能解析による病態解明研究2015

    • 著者名/発表者名
      中沢 由華、荻 朋男、唐田 清伸、郭 朝万、岡 泰由、 賈 楠、嶋田 繭子、宮崎 仁美、千住 千佳子
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド(兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2015-12-02 – 2015-12-02
  • [学会発表] XRCC4 deficiency in human subjects causes a marked neurological phenotype but no overt immunodeficiency2015

    • 著者名/発表者名
      郭 朝万、中沢 由華、嶋田 繭子、賈 楠、唐田 清伸、 岡 泰由、宮崎 仁美、千住 千佳子、荻 朋男
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド(兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2015-12-02 – 2015-12-02
  • [学会発表] 各種コケイン症候群の分子診断.2015

    • 著者名/発表者名
      賈 楠、中沢由華、荻 朋男、唐田清伸、郭 朝万、岡 泰由、 嶋田繭子、 宮崎仁美、 千住千佳子.
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      神戸ポートアイランド(兵庫県神戸市)
    • 年月日
      2015-12-02 – 2015-12-02
  • [学会発表] ゲノム不安定性を示す難治性遺伝性疾患群の症例収集とゲノム・分子機能解析による病態解明研究2015

    • 著者名/発表者名
      中沢 由華、荻 朋男、郭 朝万、唐田 清伸、岡 泰由、賈 楠、嶋田 繭子、宮崎 仁美、千住 千佳子
    • 学会等名
      第23回DNA複製・組換え・修復ワークショップ
    • 発表場所
      焼津グランドホテル(静岡県焼津市)
    • 年月日
      2015-10-20 – 2015-10-20
  • [学会発表] XRCC4 deficiency in human subjects causes a marked neurological phenotype but no overt immunodeficiency2015

    • 著者名/発表者名
      郭 朝万、中沢由華、嶋田繭子、賈 楠、唐田清伸、 岡 泰由、宮崎仁美、千住千佳子、荻 朋男.
    • 学会等名
      第23回DNA複製・組換え・修復ワークショップ
    • 発表場所
      焼津グランドホテル(静岡県焼津市)
    • 年月日
      2015-10-20 – 2015-10-20
  • [備考] 長崎大学原爆後障害医療研究所HP

    • URL

      http://www-sdc.med.nagasaki-u.ac.jp/index-sjis.html

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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