今年度は磁力選別による土壌浄化処理技術の開発を目指し、日本エリーズマグネチックス株式会社のフェラストラップ(表面磁力1.5T)を用いて、固液比1:20 (100 g : 2L)の一定条件下で、反応時間が重金属の除去率に及ぼす影響などを検討した。なお、汚染土壌に含まれる鉛およびヒ素(V)の濃度はそれぞれ736mg-Pb/kg-soilと490mg-As/kg-soilである。 その結果、重金属の除去率は時間と共に増加するが、24時間以降の更なる除去は得られず、鉛は15%-76%(平均22%)、そしてヒ素(V)は22%-85%(平均30%)の除去率が得られた。これらの値は同じ実験を10回繰り返して得られた除去率の範囲であるが、ばらつきが大きい理由は現時点では不明である。しかし、有機物含有汚染土壌では20%以下の低い除去率であった。この理由としては、本研究で対象としたデキシー産カオリナイトに含まれるアナターゼ粒子が小さいために磁力が作用しにくいこと、そして土壌粒子との凝集性が高いことが要因と考えられた。そこで、未汚染のデキシー産カオリナイトに収着実験後のアナターゼ(大きさは約50 nm程度でデキシー産カオリナイトに含まれるアナターゼより大きい)を添加して同様の実験を行った。しかし、鉛・ヒ素(V)共に除去率の大幅な向上は得られなかった。このことから、デキシー産カオリナイトではアナターゼの表面を鉄が一部コーティングしており、この鉄により粒子全体の磁性が高まっていることが示唆された。
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