研究課題
エジプト・西ナイルデルタを流下するUmoum排水路の流域16箇所より水試料を採水し,一般的な水質項目の他に大腸菌を定量した。その結果,排水路の本流においても大腸菌濃度が10^2~10^3 CFU/100mL,最高値はUmoum排水路の支流にあたるDishody排水路で10^6 CFU/100mLが検出された。この大腸菌濃度は一般的な都市下水から検出される濃度とほぼ同等となり,深刻な汚染状況が明らかとなった。その後の調査でDishody排水路にはその上流にあるKafl El-Dawar市(人口規模26万人)からの未処理下水が流入しており,実際に現地ではその水を灌漑に利用している状況が確認されたため,Dishody排水路を対象に3ヶ月毎の通年ウイルスデータを取得することで農業従事者への健康リスク算定をおこなった。ウイルスは9種類(ノロウイルスGI,ノロウイルスGII,ノロウイルスGIV,アデノウイルス,アイチウイルス,エンテロウイルス,A型肝炎ウイルス,E型肝炎ウイルス,ロタウイルス)を対象とした。その結果,ウイルス性胃腸炎を引き起こす代表格であるノロウイルスGIとGIIは,通年で10^1~10^2 copies/mLの濃度で検出された。Dishody排水路周辺の農地では,排水路から取水しトウモロコシ,大麦,水稲が栽培されていることから,これらの農作物の育成に必要な灌漑水量と栽培日数を設定し,農業従事者に対する水系感染症リスク(比較基準として米国環境保護庁が定める微生物許容感染リスク<10^-4/年)と障害調整生命年(WHO基準<10-6 DALY pppy)を算出した。その結果,水系感染症リスクおよび障害調整生命年ともに基準を大きく上回る結果となり,現在の灌漑利用は高いリスクを伴うことが示された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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