研究課題
研究計画の2年度目として、複雑混合物の暴露評価手法開発に取り組んだ。前年度までにGCxGC分析を可能とする実験基盤の構築と自動車エンジンオイルの定期サンプリングを行った。また試料前処理方法の検討を行った。さらに2次元溶出位置に基づく物性推定のツールプロトタイプを作成した。推定可能な物性はlog Kowやlog BCFをはじめとしたリスク評価などに用いられる代表的な物性である。2年度目は、前年度に引き続きエンジンオイルの定期サンプリングを実施しサンプルの拡充を行った。また、そのサンプリング試料について2次元ガスクロマトグラフ分析を進めデータ整備を行った。データ分析については、異なるカラム組み合わせでのGCxGC分析なども実施した。分析の結果においては、多環芳香族炭化水素類(PAHs)など使用過程で生じる環境変化体の存在を確認できた。エンジンオイルのサンプリングのタイミング(走行距離)とPAHsの増加量の関係から、これらは燃焼生成あるいはエンジン部分からの混入によるものと考えられた。さらに、昨年度作成した物性推定ツールについて、推定できる物性項目の拡充のために、物性推定に必要となるAbrahamのLFER式のシステムパラメータのデータ収集を実施した。また環境変化試料等の系統的な混合物試料のGCxGC分析データに対し、各分析回で生じる溶出位置のズレをデータ補正するツールの開発に取組み、溶出位置から物性を推定する本手法の精度を向上できる基盤を整えた。
2: おおむね順調に進展している
研究計画として掲げた、残油成分のGCxGC分析を予定通り実施できた。また物性推定ツールのプロトタイプの改良進めることが出来た。また推定可能な物質種の範囲拡充を見据え、新たなカラムコンビネーションでのエンジンオイル試料のGCxGC分析を順調に進める事ができた。推定可能とする物性の種類を増やすためにAbrahamのLFER式におけるシステムパラメータのデータを収集することが出来た。以上のように、研究計画を順調に進める事が出来た。また2次元溶出位置に基づいて物性を推定する本手法においては、GCxGC分析において生じやすい溶出位置のズレが問題となる事が多いが、溶出位置のズレを補正するツールの開発を進め、本手法の課題点の改良に成功した。このように当初の予定以上の成果も含んでおり、全体として順調な研究進捗であると考える。
これまでの研究進捗により、エンジンオイル試料に対し物性推定を実行可能となった。今後は、推定可能な物性項目の追加、推定可能な対象物質種の拡大の検討を引き続き進めていく。また同時に、推定範囲外の物質がGCxGC分析データ中に混在する場合、推定手法の適用範囲内物質と適用範囲外物質を化学分離あるいはデータ分離する方法の検討を進めていく。またリスク評価などのために使いやすい物性推定ツールへの改良を行っていく。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (11件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件)
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