最終年度となる本年度は、残油試料のGCxGC測定により得られたデータに対し、これまでに開発した手法である保持時間補正や物性推定手法を適用し、含有成分の物性推定、環境動態、環境運命について解析を行い、混合物中成分の人や生物への暴露についての評価方法の検討を進めた。開発したGCxGC測定データに基づく物性推定については、解析対象と出来る成分の範囲が現段階では炭素、水素、ハロゲン類から構成される非極性物質に限られる。残油の中には燃焼反応物など未同定の成分が含まれるため、これら成分の内いくつかに関しては、開発した物性推定手法の適用範囲外である可能性があった。そこでLC分画手法を適用し、残油試料中の解析対象範囲内成分の化学的抽出を行った。これにより得た対象範囲内となる非極性物質のLC分画フラクションについて改めてGCxGCにて測定し、検出された成分について、混合物の物性、環境動態、環境運命の解析を行った。この方法を取る事で燃焼反応物を含む複雑な混合物試料に対しても、推定精度が明らかな形で環境動態の推定や人や生物への暴露に関する評価が可能となった。将来的な展開としては今回評価の対象外とした成分を含むLC分画フラクションに対しても推定可能となるよう適用範囲の拡大を行っていく必要がある。 また製品混合物である残油以外に、環境混合物である道路塵埃に対しても適用し同様に評価を行う事が可能であることを確認した。これらの成果について、国内学会および国際学会で発表を行い、国際誌2編としてまとめ発表を行った。
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