研究課題/領域番号 |
15H05342
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
本下 晶晴 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 安全科学研究部門, 主任研究員 (50371084)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ウォーターフットプリント / 水資源 / サプライチェーン / ライフサイクルアセスメント / 産業連関分析 |
研究実績の概要 |
世界的な水需給バランスの不均衡とサプライチェーンのグローバル化により、日本で生産される製品/サービスの隠れた水資源フローとそれに起因する環境リスクが懸念されている。本研究では、我が国の製品・サービスに関わる世界のサプライチェーンを通じた水資源フローに関わる環境リスクの分析を目的として、我が国の製品/サービスの水資源フローを可視化するデータベースの開発、水消費に起因する物理的資源ストレスを通じた環境リスク影響を定量評価する世界スケールのモデルの構築を行う。これらを組み合わせることで我が国の製品/サービスに関わる隠れた水資源フローとその環境リスクの分析を可能とし、さらに将来の消費支出構造の変化による環境リスクの変化を時系列で予測し、水資源に関わる環境リスクの中長期的な予防的管理に資する手法の開発を目指す。 本年度は国産の全製品・サービスの生産に関わる水消費量データの作成と、各国における水資源消費に伴う環境リスク評価モデルの開発として生態系への影響評価モデルの開発を行った。国産の製品・サービスの生産・提供に関わる水消費として、産業連関分析を援用するため日本の産業連関表(2005年版)に対応した403部門を対象として、直接の水消費量の算定を農作物水収支計算モデルや統計データに基いて行った。算定された直接水消費量を基に産業連関表を用いた遡及計算によりサプライチェーン上流の水消費量を含む各部門の水消費原単位データを作成した。水消費による生態系への影響として陸生植物の生育阻害を対象として、水資源制約条件下における一次生産量算定モデルを用いて、水資源消費による成長阻害量を推定し、一次生産量と生物種絶滅割合との関係式との関連付けにより生物多様性への影響を含む影響評価モデルを構築した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国産の製品・サービスに関わる水資源消費データについては、既存データベースのサーベイに基づいて日本の特色を反映した水消費量の算定を行うことができ、世界の関連する専門家との議論を経て妥当な算定方法となっていることを確認し、当初の予定通り403部門を対象としてサプライチェーン上流まで遡及した原単位データを作成することができた。生態系への影響については、複数のモデルの適用可能性などについても検討し、当該分野の国際的な専門家と議論を行い、当初の計画を修正しながら効率的に十分な精度の評価モデルを構築することができた。
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今後の研究の推進方策 |
国内での生産活動による水消費に加えて、輸入品に関する水消費量の算定のため、各国における製品・サービスの生産・提供に必要な水消費量の算定を進める。これらを基に、国際産業連関表を援用することで輸入品も含めて日本で消費される財に関わる水消費量を算定できるデータベースを構築する。水資源消費に伴う環境リスク評価モデルについては、これまでに開発してきた人間健康、生態系への影響評価モデルに加えて、物理的な資源量の豊富さや競合状態も含めた水資源ストレス指標を開発することで、水消費からストレスの発生(ミッドポイント)を通じた被害(エンドポイント)までのリスクを包括的に評価することができるモデルへと発展させる。
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