本研究は食品由来の抗酸化剤であるカロテノイドの抗炎症性作用に着目し、肥満によって誘導されるインスリン抵抗性や慢性炎症に対するインパクトを検証することである。更に、これらを検証するために炎症促進モデルを作製し、代謝表現型についても明らかにする。 カロテノイドであるリコピンは、高脂肪食投与による肥満を誘導したマウスのインスリン抵抗性や脂肪肝炎、脂肪組織の酸化ストレスを抑制することを明らかにしてきた。今回、フローサイトメトリーで、脂肪組織に浸潤するマクロファージの定量的解析を行ったところ、炎症惹起性のM1マクロファージ(CD11c+CD206-)は23%減少し、抗炎症性M2マクロファージ(CD11c-CD206+)は60%増加した。その結果、M1から M2優位へと脂肪組織のマクロファージの極性シフトを認めた。以上の結果から、リコピンは肥満による炎症を抑制し、インスリン抵抗性を改善させることが示唆された。 インスリン感受性の制御に関与するケモカイン受容体CX3CR1をマクロファージ特異的に欠損したコンディショナルノックアウト(cKO)マウスを作製し、代謝表現型解析を行った。高脂肪食による肥満を誘導したcKOマウスは、耐糖能異常、脂肪組織における炎症性サイトカインの遺伝子発現の増加だけでなく、形態学的解析から脂肪組織に浸潤するマクロファージの増加も明らかとなった。更に脂肪組織におけるインスリンシグナルの減弱も認めた。また肝臓における中性脂肪の蓄積も有意に増加しており、脂肪肝が増悪していた。マクロファージにおけるCX3CR1の発現は、高脂肪食による脂肪肝、慢性炎症、及びインスリン抵抗性の発症に重要であり、cKOマウスは炎症促進モデルとして有用であることが示された。
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