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2016 年度 実績報告書

鉄摂取の過不足が生体内遺伝子発現に及ぼす影響とその制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 15H05346
研究機関公益財団法人神奈川科学技術アカデミー

研究代表者

亀井 飛鳥  公益財団法人神奈川科学技術アカデミー, 未病改善食品評価法開発プロジェクト, 研究員 (40514112)

研究期間 (年度) 2015-04-01 – 2018-03-31
キーワード鉄欠乏 / 血液 / トランスクリプトーム
研究実績の概要

これまでに鉄欠乏性貧血マウスの肝臓の網羅的な遺伝子発現解析を行い、鉄を補欠分子族とする因子の変動や、糖、脂質、アミノ酸などの代謝の変動を見出した。これらは、ラットの研究結果と一部一致しているものの、異なる点も多く見られた。これは、生物種による鉄不足への応答の違いを反映しているものと考えられた。
一方、ラットを用いた研究では、肝臓を対象とした網羅的な遺伝子発現解析から鉄不足の影響を明らかにしたが、それに加えて血液の網羅的な遺伝子発現解析も行った。これは、体内の鉄量の変化に応答する新規マーカーとして血液のmRNAを活用し、将来的にはヒトにおいても応用・展開することを想定している。既存の鉄欠乏マーカーには、血液中のヘモグロビン、フェリチン、TIBC(トランスフェリン総鉄結合能)等が挙げられるが、それらに比してより早期に変動するmRNAを活用することで、体内鉄量の変化を早期に発見するという狙いがある。肝臓を対象とした研究では、生物種による鉄欠乏への応答の違いが見られた。このことから、鉄指標の新規マーカーとしての血液の遺伝子発現についても、ラットだけでなくマウスにおける検討を行うことで生物種を超えた共通性を見出すことができ、ヒト試験に向けてマーカー候補の精度を上げることができると考えた。そこで、鉄欠乏性貧血マウスの血液を対象とした網羅的な遺伝子発現解析を行い、通常食群と鉄欠乏食群とで有意な発現変動の観察された遺伝子を抽出した。その上でラットの実験にて見出したマーカー候補と比較を行い、両者で共通の変動を示す遺伝子に絞り込み、より精度の高いマーカー候補と定義した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

鉄欠乏に対する生物種による応答の違いが見出されたこと、動物試験の結果をヒト試験に応用・展開することを急ぎ目指すこと、を背景に、当初の予定である貧血のない鉄欠乏マウスの肝臓トランスクリプトーム解析から変更し、優先的に鉄欠乏性貧血マウスの血液トランスクリプトーム解析を実施した。これにより、鉄欠乏が生体に及ぼす影響について、ヒト試験での検証を行うための基盤を構築するに至った。

今後の研究の推進方策

本研究により、鉄欠乏が生体に及ぼす影響についてマウスを対象とする解析を行ったが、不足ではなく鉄過剰のリスクについての検証を行う。鉄は臓器に過剰に蓄積することで、Fenton反応を介して臓器に傷害を与える。貧血時に処方される鉄剤の過剰摂取や、日常的な高鉄含有食品の過剰摂取により、生体内が鉄過多になる可能性は無視できないにも関わらず、鉄過剰摂取に関する研究の多くが通常食の数百倍という非日常的な鉄添加量で実施されており、日常的に摂取可能な量の過剰摂取の安全性評価の研究例はほとんどない。一方、我々は鉄量が通常食の約10倍の鉄過剰食をラットに与え、肝臓や血液の遺伝子発現が変動することを見出した。すなわち日常的に起こる鉄過剰摂取においても、生体が応答し、健康リスクが生じる可能性を強く示した。この現象について、鉄欠乏同様にマウスでも検証を行い、そのリスクを明らかにする。
本研究は、鉄欠乏に関する研究の成果とともに、鉄栄養状態に対する生体応答システムを明らかにすることを目指すものである。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件)

  • [雑誌論文] Quantitative deviating effects of maple syrup extract supplementation on the hepatic gene expression of mice fed a high-fat diet.2016

    • 著者名/発表者名
      Kamei, A., Watanabe, Y., Shinozaki, F., Yasuoka, A., Shimada, K., Kondo, K., Ishijima, T., Toyoda, T., Arai, S., Kondo, T., Abe, K.
    • 雑誌名

      Mol Nutr Food Res.

      巻: 61 ページ: -

    • DOI

      10.1002/mnfr.201600477

    • 査読あり / 謝辞記載あり

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公開日: 2018-01-16  

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