鉄は、私たちが生命活動を維持するのに不可欠の栄養素のひとつであり、鉄欠乏は世界で最も多くみられる栄養不良である。体内の鉄が不足すると貧血のない鉄欠乏(貧血予備群)を経てやがて貧血に至る。一方、鉄には過剰摂取のリスクも指摘されており、例えば臓器への蓄積に伴う酸化傷害の惹起が報告されている。本研究では、マウスを対象とした実験により、鉄摂取量の不足あるいは過剰時に臓器の鉄貯蔵量が減増することを確認し、それに応答して発現変動する遺伝子について肝臓や血液を対象に網羅的に解析し、鉄の過不足に対する生体の応答制御機序の一端と、体内鉄量を反映する指標としての可能性を示した。
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