当該年度の研究としては、前年度までに得られた研究成果の論文化を行った。また、実験環境でのフロー喚起の精度向上のため、フローを体験しやすい個人の特定を目的として、フロー体験の頻度に関連する個人特性の検討を行った。さらに、異なる課題間でのフロー状態の生理計測データの比較という新たなテーマを設定し、暗算課題と異なるフロー状態喚起課題の作成に取り組んだ。 フロー状態の生理的計測の成果の論文化については、前年度までの研究結果をまとめてFrontiers in Psychology誌のPerformance ScienceセクションのOriginal Research Articleとして投稿し、採択された。フローを体験しやすい個人特性については、フロー状態の阻害要因に着目し、自己に対する焦点化を行いやすい個人ではフローが体験されにくいという仮説を立て、自意識尺度、セルフモニタリング尺度と特性フローとの関連を調べる質問紙調査を実施した。結果より、自意識尺度で測定される私的自己意識と公的自己意識がフロー体験の別々の側面に対して抑制的に関連することが明らかとなった。この研究成果について、心理学の国際会議ICPS2019で発表を行った。新規のフロー喚起課題に関しては、もぐら叩き(whack-a-mole)ゲームを模した課題と認知課題であるスタンバーグ課題を組み合わせ、同一の課題枠組みにおいて知覚運動と認知のそれぞれの側面を独立に操作可能な実験課題を考案し、実験プログラムのプロトタイプを作成した。
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