高暦化社会が問題となっている近年において、自治体における保健・医療・福祉の需要把握とその需要に対する適切な供給が行われていることかを把握することは、住民の生活に密接に関係していることでもあり非常に重要なことである。本年度においては、地域における保健・医療・福祉の需要の見える化と、その需要に対する供給のあり方を検討した。 地域における保健・医療・福祉の需要については、特に65歳以上の住民に注力し、地域における住居の偏在具合と可視化を地理情報システムを用いて行い、自治体内のどの地域にどのくらいの65歳以上の住民が住んでいるかを明らかにした。その上で、医療需要と提供の関係性を明らかにすべく、65歳以上の住民の受診が多い診療科として、内科・皮膚科・眼科・整形外科をもち医療機関について、徒歩500m、1000m、1500mの3段階の距離の閾値を用いて住民のカバー率の見える化を行った。地理情報システム上で可視化される距離ごとのカバー率は65歳以上の住民にとっての医療や保健などを考慮した住みやすさ指標としての活用が期待される。 また、厚生労働省が実施している患者調査を活用して、住民の傷病の発症及び発症した傷病からの医療機関選択モデルを構築した。この医療機関選択モデルは、傷病に応じて診療所の選択、20床以上の入院機能を持つ病院の選択が住民一人一人の属性値、例えば性別や年齢に応じて行われるものである。可視化された医療・保健・福祉の需要に対して、実際に住民がどのような医療機関選択を行い、どの病院に患者が集まる傾向があるかのシミュレーションを可能にするものである。 保健・医療・福祉の需要と現在の供給状況を地理情報システムによって見える化を行い、病院選択モデルを構築することで予期・予測を行う環境を構築した。
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