研究課題/領域番号 |
15H05358
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
古屋 晋一 上智大学, 理工学部, 准教授 (20509690)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 局所性ジストニア / 経頭蓋磁気刺激 / 経頭蓋直流電気刺激 / 脳神経可塑性 / ニューロリハビリテーション |
研究実績の概要 |
過剰な訓練は,高度な技能の獲得を可能にするだけではなく,時に脳神経系に異常を引き起こし,技能の低下を招く.即ち,超絶技巧の獲得と,脳神経疾患の発症は,紙一重である.過剰訓練が招く巧緻運動機能の低下を改善する機能回復訓練法を開発するため,本研究は,局所性ジストニア(FD)を疾患モデルとし,非侵襲の経頭蓋電気刺激(tDCS)と運動機能回復訓練を組み合わせた神経リハビリテーションが,FDによる巧緻運動機能低下と脳神経機能異常に及ぼす影響を明らかにする. 今年度は,経頭蓋磁気刺激(TMS)およびデータグローブによる動作分析を用いて,tDCS介入の効果を評価する実験を,のべ120名を対象に実施した.健常音楽家およびFDを罹患した音楽家それぞれ30名ずつに対して,tDCSの実刺激およびシャム刺激を用いた状態で両手指鏡像動作をピアノを用いて行う介入を行った.実験は一人につき3時間半から4時間程度で,大規模数の被験者の実験を実施したため,現時点では解析は行っていない. さらに,前年度に行った事前検査によるTMSと動作分析のデータを解析した結果,大脳皮質運動野の興奮機能の亢進および抑制機能の低下がFD患者において認められ,それぞれの機能異常が,手指動作の巧緻性の異なった特徴(俊敏性の低下と正確性の低下)と関連があることが,機械学習による解析によって明らかとなった.これは,先行研究では報告されていない新奇な発見であるため,成果をまとめた学術論文は,現在,査読のある国際学術誌に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度に行った事前検査の結果はまとめ,論文として投稿している他,本実験である介入実験も本年度終了しており,残りはそのデータ解析および,追加実験として,複数日の介入効果の検証のみであり,研究計画書の予定通りに遂行されている.
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今後の研究の推進方策 |
得られたTMS及び動作分析のデータを解析し,国際学術誌に論文を投稿する.さらに,当該介入をFD患者に対して複数日実施し,単日介入に比べて,複数日の介入の方が,FD患者の手指巧緻性の向上度が大きいかを検証する.得られた結果は,国立精神神経医療研究センター病院およびハノーファー音楽演劇大学 音楽生理学・音楽家医学研究所にて,共同研究者らと議論を行い,適切な解釈を行うことを目指す.
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