研究課題/領域番号 |
15H05362
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
平島 雅也 国立研究開発法人情報通信研究機構, 脳情報通信融合研究センター脳情報通信融合研究室, 主任研究員 (20541949)
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研究期間 (年度) |
2015-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 筋骨格モデル / 体表面形状 / ポリゴンモデル / モーションキャプチャー / カスタムメイドモデル |
研究実績の概要 |
従来の筋骨格モデルでは、筋のボリュームが無視され、肩などの複雑な関節では正確な筋走行を再現できないという大きな問題を抱えていた。この問題を根本的に解決するため、筋肉のボリュームと干渉による変形を考慮したデフォーマブル筋骨格モデルの開発を行ってきた。しかし、現時点のデフォーマブル筋骨格モデルは標準体型モデルに過ぎず、整形外科、スポーツ、リハビリなどのバイオメカニクス関連分野に応用するには、各個人のモデル(カスタムメイドモデル)を作成する技術が必要である。本研究では、被験者の体表面形状を用いてカスタムメイドモデルを作成する技術の開発を行う。 本年度は、被験者の体表面形状をモーションキャプチャーで計測するためのプロトコルの整備を行った。まず、体表面形状を高精度に計測するための計測方法について検討した。被験者の前腕部に150個もの大量の極小マーカー(直径3mm)を約15mm間隔で表面全体を覆うように貼付し、各マーカーの3次元位置をモーションキャプチャーで撮影した。6台のカメラだけでは密に配置された極小マーカーを識別することは困難であったが、12台程度のカメラを適切に配置することでほぼすべてのマーカーの記録に成功し、高精度なポリゴンモデルを得ることができた。次に、最適なマーカー数を検討するため、得られた高精度モデルのマーカー数を減らしたモデルをコンピュータ上で作成し、マーカー数がモデル精度に与える影響について検討を行った。高精度モデルは約150点(13(スライス数)×12(1スライスあたりの円周点数))から構成されるが、スライス数としては約6スライス、円周点数としては約6点よりも小さくなると急激に高精度モデルからの誤差が増加することがわかった。この解析で得られたマーカー数を用いることで、効率良くかつ正確に表面形状を計測することができると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、被験者の体表面形状をモーションキャプチャーで計測するためのプロトコルの整備を行うことが目的であった。このために必要な①「計測技術」と②「解析技術」の開発を行ったことから、おおむね順調に進展していると言える。 ①計測技術:当初、高精度モデルの取得のために、施設に既存の6台のカメラ(Raptor-12カメラ)を用いて計測を行った。これらのカメラは1,250万画素もの高解像度を有するものの、密に配置された大量のマーカーを個別に識別することはできなかった。私はこれを解像度の問題ではなく、カメラ台数不足であることを見極め、中程度の解像度のカメラ(Kestrel、220万画素)をできるだけ多く(6台)追加配備することによって計測を成功させた。 ②解析技術:マーカー数がモデル精度に与える影響を解析するために、高精度モデルからマーカーの数を減らしたモデルをコンピュータ上で作成し、高精度モデルとの体積誤差を計算する必要があった。2つのポリゴンモデルの体積誤差を計算する際に、各ボクセルが2つのモデルに含まれるか否かの判定を行うが、ボクセルサイズが小さい場合、その判定には膨大な計算量が必要になる。GPUを用いた並列計算手法を用いてこの問題の解決を行うなど、体表面形状を定量的に扱うための解析技術の開発も十分進展したと言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本年度得られた体表面形状にデフォーマブル筋骨格モデルをフィットさせるための準備を行う予定である。まず、デフォーマブル筋骨格モデルの内部を埋め尽くすようにすべての筋をモデル化する必要がある。これまで肩を対象にデフォーマブルモデルを作成してきたため、まずは肩の完全なモデルを作成することを目指す。 また、多くの筋が複雑に重なり合う肩を正確に表現するには、筋同士または筋と骨の干渉を検知して適切に回避することが必要である。多数のポリゴン間の干渉を検知・回避には、多大な計算負荷が必要とされるため、GPU並列計算プログラミングを用いて計算時間の軽減を図る。
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