研究課題
本研究はサルコペニア(老化に伴う骨格筋量とその機能の低下)の新たな評価法の開発と検証に関する課題である。世界的なコンセンサスでは、骨格筋量は、二重X線エネルギー吸収法(DXA)、X線CT、核磁気共鳴画像法(MRI)などの画像法がゴールドスタンダードになっているものの、臨床現場や介護予防現場で多数を迅速に測定するには適さない。さらに、DXAやCTではその後の身体機能障害や総死亡リスクの予測が弱いなどの問題が指摘されている。その理由として、骨格筋量だけでなく筋内組成にも着目した測定評価技術が必要と考えられる。我々は、生体内骨格筋組織の電気特性の非侵襲的測定を用いて、新しい骨格筋評価技術の開発と検証に取り組んでいる。本年度は、運動介入によるランダム化比較対照試験(RCT)を実施し、高齢者の筋機能向上を惹起させ、S-BIS法やその他代替法でその運動効果を検証することとした。運動の内容としては、漸増負荷レジスタンストレーニングの有用性が論文上もっとも高いとされているが、地域の高齢者では必ずしも多くの人が実施できるわけではない。そのため、血圧の上昇しにくいスロートレーニング(石井直方教授、谷本博士、渡邊博士)やスロージョギング(田中宏暁教授、池永博士)などを応用し、運動プログラムの有用性を生体電気インピーダンス分光法(BIS)で検証した。その結果、スロージョギングによってCTによる筋内HU値が変化するとともに、BISによる細胞内液量が増加することなどが明らかになった。また、BIS法の様々なパラメーターが筋発揮パワーと関連することも新規に明らかにした。(2017年3月号Journal of Gerontology Editor's Choice論文に選出)
1: 当初の計画以上に進展している
昨年度は、予期せぬ病気により長期療養の必要が生じたが、今年度は順調にデータ収集と結果解析、論文投稿が進み、本研究に関する成果を多数報告することができた。さらに、学会等でのつながりにより新しい共同研究も始まり、本研究課題で開発したBIS法の更なる応用の可能性が広がっている。
最終年度であるH29年度において、MRIやCT、DXAとの比較を丁寧に実施し、その妥当性を改めて検証していくと共に、初めて明らかになった主要パラメータの生理学的意義について、基礎実験と組み合わせて明らかにしていくこととする。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (13件) (うち国際共著 2件、 査読あり 11件) 図書 (2件)
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