研究実績の概要 |
骨格筋は肥大・萎縮をする可塑性を有すると共に、質的な可逆変化つまり筋線維タイプ(遅筋・速筋)とそれに伴う代謝変換能(酸化系・解糖系)を有する。各種運動による筋肥大時、或は加齢や不活動に伴う筋萎縮の過程でも筋線維タイプ変換が生じるが、詳細なメカニズムは明らかではない。本研究では、全ての筋線維タイプを蛍光蛋白で生きたまま識別することができるマウスを用いて、筋線維タイプ変換を惹き起こす生体内因子・薬剤を網羅的に探索し、骨格筋線維タイプ変換メカニズムを明らかにする。さらに筋線維タイプ変換誘導因子を用いて加齢や不活動による筋萎縮に対する予防・治療法開発を目的とした。本年度は、作成したマウス由来の培養筋管細胞に対して、約100種類の生体内因子・薬剤を添加し、遅筋線維(Type I)あるいは速筋線維(Type IIb)を誘導する因子を複数同定した。筋線維タイプの変換は、定量PCRを用いたMyHC遺伝子発現(遅筋: MYH-7, 速筋: MYH-2, -1, -4)においても確認した。さらに筋線維タイプ変換が代謝機能を伴う変換であるか否かを検討する為、細胞外フラックスアナライザーXFpを用い、酸素消費量を指標とするミトコンドリア活性能、或はpH値変化を指標とする解糖能の変化を検討した。過去文献ではC2C12筋細胞株を用いたXFpでの解析が主であったが、本研究ではマウス初代培養筋細胞を用い、解析条件を確立する事ができた。XFpを用いた解析の結果、遅筋(Type I)を誘導する因子は主にミトコンドリア代謝能が、速筋(Type IIb)を誘導する因子は主に解糖能が優位に機能している事が確認された。これらの結果を裏付けるため、ミトコンドリア特異的遺伝子(PGC-1α, NRF1, Tfam)発現を定量した結果、遅筋誘導因子はPGC-1α, NRF1, Tfamの各遺伝子発現を上昇させていた。
|