本研究は、大規模地域コホートから抽出した軽度認知障害(mild cognitive impairment: MCI)を有する高齢者を対象とし、縦断追跡調査を実施することで、MCIから認知機能正常への移行に寄与する脳の変化と身体・知的活動がMCIからの変化ならびに脳へ及ぼす影響について明らかにすることを目的とする。診療報酬明細書・要介護認定情報のデータベースを活用して認知症発症について調査し、認知機能検査を実施してMCIから正常へと回復する高齢者を同定する。さらに、脳画像データを縦断解析することで、MCIからの状態変化と関連する脳領域を同定する。また、身体・知的活動の実施がMCIからの移行に影響を与えているかという点について、認知機能と脳の変化における視点からその因果関係を検討する。これらのデータを統合することで、MCIから正常への移行を支持する脳構造を縦断的変化から明らかにすることと、対象者の身体活動と知的活動に着目し、活動の実施がMCIからの改善に対し効果を有しているのか否か、さらには、脳構造・脳機能への効果を長期縦断的に検討することでその因果関係を明らかにする。本研究は、大きく分けて2つのコホート(平成23年・25年に各々高齢者機能健診実施)において調査を実施し、各コホートにおいて、縦断追跡調査(①再調査(機能測定・MRI測定)と②追跡調査(診療報酬明細書・要介護認定情報))を実施する。平成27年度は平成23年度に実施した高齢者機能健診の受診者(5104名)から抽出したMCI高齢者に対し、追跡調査の機能健診ならびにMRI調査とあわせて発症データベースの構築を行った。調査は概ね順調に進行しており、平成28年度の4月まで同コホートでの調査を継続予定である。
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