研究課題
本研究では,プライベートシャペロンのフォールド特異的な基質タンパク質認識と,分子シャペロン機能の相関関係を明確にすることを目的に,人工結合タンパク質作製基盤の構築とそれを起点とした合成生物学的研究に取り組む。本年度は,昨年度に引き続き,人工結合タンパク質作製基盤を構築するために,新規な人工結合タンパク質の分子骨格設計,ファージディスプレイライブラリーの作製,ライブラリーの選別に取り組んだ。人工結合タンパク質の分子骨格として,Chitinase A1のキチン結合ドメイン,scMonellin,Keap-1のKelch repeatドメインの3種類を用いた。キチン結合ドメインについては,昨年度に作製したライブラリーからモデル標的タンパク質に結合する人工結合タンパク質を選別できなかったため,アミノ酸配列を多様化させる領域およびアミノ酸残基の組成の偏りを考慮した3種類のファージディスプレイライブラリーを新しく作製した。scMonellinを骨格としたファージディスプレイライブラリーについては,サイズが3×10^8のものを作製した。また,昨年度の段階ではKelch repeatドメインはファージ表面提示されなかったが,コンストラクトの再検討により問題を解決し, 3×10^8程度のファージディスプレイライブラリーを作製した。作製したファージライブラリーの選別をモデル標的タンパク質に対して行った。しかしながら,いずれのライブラリーからもモデル標的タンパク質に結合する人工結合タンパク質を取得できなかった。新たに系を確立した固相結合実験により,野生型キチン結合ドメインは正しくフォールドされてファージ表面上に提示されていることが確認された。また,対照となるファージを混入したファージディスプレイライブラリーの選別を実施することにより,ライブラリー選別の条件に不備はないことがわかった。
3: やや遅れている
計画通り,3種類のタンパク質ドメインを骨格としたファージディスプレイライブラリーの作製とその選別を遂行した。しかし,当初の目標であるモデル標的タンパク質に結合する人工結合タンパク質の取得には至っていないため,表記の通りの区分とした。
ファージディスプレイライブラリー設計の再検討,ライブラリーサイズの向上と並行して,選択した3種類のドメインが人工結合タンパク質の分子骨格として適しているか否かを,精製タンパク質を用いた安定性試験を実施することにより検討する。また,洗浄やファージの溶出をはじめとするファージディスプレイライブラリーの選別条件も再検討する。分子骨格に問題があると判断された場合には,バックアッププランとして,人工結合タンパク質の分子骨格として既報のタンパク質ドメインを用いてファージディスプレイライブラリーを作製することにする。
すべて 2016
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Sci Rep.
巻: 6 ページ: 25745
10.1038/srep25745.