研究実績の概要 |
これまでにLateral Geniculate Nucleus(LGN)やLateral Posterior Nucleus(LP)などの視床の神経核にCreを特異的に発現するマウスを見出している。そこで本年度は、これらLGN-CreマウスおよびLP-Creマウスを用いて、視覚情報処理におけるLGNおよびLPの役割を明らかにする目的で、以下の研究を実施した。 特定の神経細胞を制御する方法として、光感受性のチャネルやポンプを利用した光遺伝学、人工リガンドに特異的なチャネルを利用した薬理遺伝学が開発されている。そこでLGNおよびLPの神経活動を特異的に操作する目的で、これら光遺伝学ツールおよび薬理遺伝学ツールの導入を試みた。特定の神経核のCre発現細胞にのみ特異的に遺伝子導入を行う目的で、Cre依存的に発現可能なアデノ随伴ウイルスベクターを作製した。光遺伝学ツールとして活性化のためにChR2(H134R), ChR2(E123T) (ChETA)を、抑制のためにArchTを, 薬理遺伝学として活性化のためにhM3Dq, PSAM/5HT3HC, KORDを、抑制のためにhM4Di, PSAM/GlyRを用いた。これらをCre依存的に発現するAAV-DIO/FLEXベクターを作製し、成体マウスの脳に微量注入し、比較・検討を行った。いずれのウイルスベクターもレポーターとして蛍光タンパク質を同時に発現することから、ウイルス感染3週間後にこれらの発現を組織学的に解析した結果、いずれのAAVでもレポーターの蛍光の発現が認められた。光遺伝学操作には光ファイバーを用い、薬理遺伝学操作には各々に特異的なリガンドとしてhM3DqとhM4DiにはCNOを、PSAM/GlyRとPSAM/5HT3HCにはPSEMを、KORDにはSALBを用いた。上記のアプローチを比較した結果、2光子顕微鏡イメージングとの相性を優先し、実験の簡便さおよびコストなどを総合的に判断して、活性化にはhM3Dqを、抑制にはhM4Diを用い、そのリガンドであるCNOを腹腔内投与することによる薬理遺伝学的アプローチが最適であると結論付けた。
|