1980年代のフランスのコンテンポラリーダンスは、作者の思想やメッセージを作品に結晶化するタイプの「作者のダンス」が多く見られたが、90年半ば以降には、従来の「ダンス」や「作品」という概念そのものを疑う「ノン・ダンス」という傾向が生じた。ダンスを否定するものとして誤解されたこの動向は、実際には、ダンスの概念を拡張したものであり、「作者のダンス」が重視してこなかったダンサーの個人性や主体性、観客の参加や関与を取り込むことに注力していた。結果として、コンテンポラリーダンスが主体という哲学的問いや社会モデルの構築に貢献しうることを明らかにした。
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