研究実績の概要 |
本年度の研究では、日本語を含む複数の異なる言語を母語とする英語学習者の言語情報の使い方が英語母語話者とどのように異なるかについての検証を行うため、日本語、中国語、スペイン語、ポルトガル語を母語とする英語学習者のグループを対象にプロソディー情報が統語構造分析に与える影響を調べる眼球運動計測実験を行なった。実験では、音声と同時にスクリーン上に提示される絵への注視パターンを分析する視覚世界パラダイムを用い、”Tap the frog with the flower.”のようなPP attachment ambiguityによる構造的曖昧性を伴う文の解釈において、前置詞句内にの名詞に置かれた対比的プロソディー(e.g., Tap the frog wiht the FLOWER)と視覚情報として与えられた文脈情報の交互作用を検証した。予測されるパターンとして、対比的プロソディーが学習者の統語分析に用いられるのであれば、文脈内に道具(flower)に対する対比となる物がある場合には,‘flower’に置かれた強調は動詞を修飾する情報として解釈される(i.e., Tap the frog by using the flower)のに対し 文脈内に動作の対象となる名詞(frog)への対比がある場合には、‘flower’に置かれた強調は名詞句を修飾する情報として解釈される(i.e., Tap the frog that has the flower)と考えられる。眼球運動パターンの分析として英語母語話者のデータについての分析が完了しており、英語母語話者の結果からは、前置詞句内にの名詞に置かれた対比的プロソディーは文脈内のコントラストを強調するキューとして用いられることが示される一方、コントラストを強調する対比的プロソディーは、コントラストを構成するエンティティーがinanimateの時よりもanimateの時の方がより強い影響を持つことが示された。
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