研究課題
本研究は、弓矢技術の存在を示唆する間接的・直接的な考古学的証拠を多角的に集成・分析し、弓矢猟の出現と波及プロセスを解明する。そのため、弓の投射実験によって石器に生じるマクロ・ミクロ痕跡の解析をおこない、それに基づいて考古資料の分析をおこなう。これにより、弓矢猟の出現期を明らかにする。また、石鏃、矢柄研磨器、弓のデータベース構築をおこなうことで、弓矢猟が波及するプロセスを定量的に評価する。平成29年度も、投射実験試料の解析結果を基に設定した指標に基づき、考古資料の分析を進めた。本年度は、ヨーロッパに最初に拡散してきたホモ・サピエンスの人骨が出土したことで有名なイタリアのカヴァロ洞窟の狩猟用石器(三日月形細石器)の分析をおこなった。本調査は、研究協力者であるシエナ大学アドリアーナ・モローニ博士の協力を得て進めた。このデータを解析することにより、西ユーラシアに拡散したホモ・サピエンスが、既に弓矢技術を所有していた可能性を検証することができる。また、鳥浜貝塚から出土した日本最古の弓の三次元形態計測をハンディ3DスキャナArtec Spiderを用いておこなった。鳥浜貝塚の調査は、研究協力者の福井県立若狭歴史博物館・鯵本眞友美氏の協力を得て進めた。上記の分析で得られたデータの整理・解析は、学生補助の協力を得て進めた。また、これまでの成果を論文にまとめ、いくつかの国際誌に論文を投稿した。また、6月におこなわれた日本旧石器学会で成果の一部を発表した。
2: おおむね順調に進展している
平成29年度は、予定通りイタリアのカヴァロ洞窟の狩猟用石器(三日月形細石器)の分析をおこなうことができた。これにより、最終年度に後期旧石器時代初頭における弓矢技術の存在に関して考察することができる。
最終年度となるH30年度は、ヨーロッパおよび日本の後期旧石器時代初頭の小型狩猟用石器の分析結果を評価し、当該期に弓矢技術が存在した可能性について考察する。また、晩氷期以降の石鏃、矢柄研磨器、弓のデータベースを解析し、狩猟時に弓矢猟が占めた割合の変化に関してまとめる。その上で、両分析結果を総合的に考察し、弓矢猟の出現から確立に至るプロセスを明らかにし、その結果を国際学会で発表すると共に国際誌に投稿する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
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巻: 17 ページ: 1-1
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